第5話「心の葛藤」

スタジオを出た大輝は、夕暮れの街を歩きながら、花園市の景色を眺めていた。

空はオレンジ色に染まり、日が沈むにつれて徐々に涼しさが増してきた。歩道に並ぶ街灯が一つずつ点灯し始め、街全体が夜の静けさに包まれようとしていた。


彼は思い出深いカフェの近くにある小さな公園に立ち寄ることにした。

公園にはベンチがいくつか置かれ、緑に囲まれた静かな空間が広がっていた。

ここは、以前奏音とよく訪れた場所で、二人で音楽や未来について語り合った思い出の場所でもあった。

ベンチに腰掛けた大輝は、しばらく黙って夕暮れの景色を眺めていた。公園の中には、まだ子どもたちが遊んでいる姿が見え、穏やかな時間が流れていた。その静けさと、夕暮れの光が、彼の心に安らぎをもたらしていた。


ふと、ポケットから取り出したスマートフォンの通知が彼の目に入った。

奏音からのメッセージだった。


「今、東京で新しい曲を作ってるんだ。大輝も頑張ってね、また一緒に演奏できる日を楽しみにしてるよ。」


そのメッセージを読んだ瞬間、大輝は胸にじんわりとした温かさを感じた。

奏音の応援と、彼女の音楽への情熱が、彼の心に深い影響を与えていることを実感した。

彼女が東京で頑張っている姿を想像するたびに、自分もまたその期待に応えなければならないと思う気持ちが強まっていた。


「ありがとう、奏音。絶対に負けないから」


大輝は心の中でそう呟きながら、スマートフォンをポケットに戻した。


彼の心には、奏音の言葉がしっかりと刻まれていた。その言葉が、彼のこれからの努力の原動力となることは間違いなかった。


夕暮れの公園でしばらく過ごした後、大輝は立ち上がり、帰路につくことにした。

彼は、自分がこれからどのような道を歩むべきかをしっかりと心に刻み、未来に向けて一歩ずつ進んでいく決意を新たにしていた。

奏音との再会を信じ、彼女と共に奏でる未来の音楽を心に描きながら、歩き始めた。


花園市の夜が彼を迎え、彼の心に希望と勇気をもたらしていた。その希望を胸に、大輝は新たな挑戦に向けて、また一歩踏み出す準備が整った。

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