第4話「奏音の笑顔」

カフェを後にした大輝は、駅前の商店街を歩きながら、心の中に芽生えた新たな決意を反芻していた。

花園市の街並みが、彼にとって以前よりも少しだけ鮮やかに映るようになった。


普段通り過ぎてしまう風景や人々が、今は彼にとって新たな意味を持っているようだった。


商店街を抜け、少し歩いたところにある音楽スタジオの前で立ち止まった。ここは、大輝が高校時代から通い続けている場所で、音楽の練習やセッションを重ねた大切な場所だった。

スタジオの窓からは、内部の音楽機材や演奏している人々の姿がちらりと見えた。


「久しぶりに中に入ってみるか」


大輝はそう呟きながら、スタジオの扉を押して中に入った。


店内には、ピアノやドラムセット、ギターアンプなどが並び、壁には昔のライブポスターや演奏の記録が貼られていた。


スタッフが彼に気づき、にこやかに挨拶をしてくる。


「久しぶりですね、大輝さん。どうしたんですか?」

「ちょっと、久しぶりにここで練習しようかと思って」


スタッフは頷きながら、スタジオの予約を確認し、大輝に鍵を渡した。

大輝は、そのままスタジオに向かい、機材をチェックした後、軽く調整を行った。


ギターの調律を整え、音の響きを確認しながら、自然と昔の練習の感覚が蘇ってきた。


大輝は、奏音と共に過ごした音楽の時間を思い出しながら、自分の演奏に集中することにした。


リズムに合わせてギターを弾きながら、彼は心の中で奏音の存在を感じていた。彼女と共に作り上げた音楽が、今もなお自分を支えていると感じた。


スタジオの中で流れる音楽が、徐々に彼の心を解放し、励ます力を与えていた。


奏音が東京で頑張っている姿を想像しながら、自分もまた努力を続けるべきだと強く感じた。彼女が夢を追い続けているように、自分もまた自分の夢に向かって努力しなければならないと、改めて決意した。


演奏が終わり、息をついた大輝は、スタジオの中で静かな感動を感じていた。

彼は、奏音との思い出が、自分にとってどれほど大切なものだったかを再確認し、その思いを胸に前に進む覚悟を決めた。


「これからも、自分を信じて続けよう」


大輝はそう呟きながら、スタジオを後にした。外の花園市の景色が、彼の心に新たな力を与えてくれるように感じられた。

彼は、自分の夢に向かって一歩一歩進む決意を新たにし、再び街を歩き始めた。

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