第3話「思い出のメロディー」

外に出た大輝は、駅前の広場をゆっくりと歩きながら、汗が滴る額を拭った。

花園市の夏の暑さは一向に和らぐ気配を見せず、街全体が熱気に包まれていた。しかし、彼の心には不思議と爽やかな風が吹いているような気がしていた。


歩きながら、彼はふと立ち止まり、駅前の小さなカフェに目を留めた。普段なら気にも留めないその場所が、今日は妙に心惹かれた。店内の窓からは、穏やかな雰囲気のインテリアがちらりと見え、そこから漏れる音楽が耳に心地よかった。


大輝は、何となくそのカフェに入ってみることに決めた。


カフェのドアを開けると、ひんやりとした空気が彼を包み込み、外の暑さとは対照的な落ち着いた空間が広がっていた。

店内には、木製のテーブルや椅子が並び、壁には古いレコードのジャケットや音楽関連のポスターが飾られていた。

音楽が静かに流れる中、店内は心温まる雰囲気に包まれていた。


大輝はカウンターに座り、アイスコーヒーを注文した。

注文を待ちながら、彼は店内の棚に置かれた音楽関連の本や雑誌に目を通した。

その中に、以前奏音が興味を持っていたアーティストの特集が載っている雑誌を見つけると、彼はそれを手に取った。


雑誌をめくりながら、大輝は自分の心がふと軽くなったような気がした。奏音が東京で挑戦していること、彼女が今も音楽を追い続けている姿を思い浮かべると、自分もまた同じように努力し続けるべきだと改めて感じた。

奏音が東京で成功するためにどれだけの努力をしているかを知っているからこそ、大輝も自分の目標に向かって全力で取り組む必要があると思った。


アイスコーヒーが運ばれてきて、彼は一口飲みながら店の窓から外の風景を眺めた。


晴れ渡る空に輝く陽光が、どこか希望をもたらしているようだった。

街の人々の笑顔や、日常の小さな幸せが、彼の心をほんの少しだけ軽くしてくれる。


「これからも、頑張らないと」


大輝は呟きながら、アイスコーヒーを飲み干し、店を後にした。


外の花園市の暑さが彼を迎え入れると、彼は深呼吸をして気持ちを引き締めた。

奏音が東京で輝いているように、自分もまた一歩一歩前に進んでいく覚悟を決めていた。

その決意を胸に、大輝は再び歩き始めた。目の前に広がる街の風景が、彼に新たな希望と勇気を与えていた。

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