第14話「最初のメロディー」

大輝はギターを手にしながら、音楽に向き合う自分自身を再確認するように、深い呼吸をした。


奏音と過ごした日々は、彼の心の中で鮮明に蘇り、今でも彼の音楽への情熱を支え続けていた。

彼が音楽に真剣に取り組むようになったのは、あの特別な日のことがきっかけだった。


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その日は特に暑く、二人は放課後、学校近くの川辺に座っていた。


奏音はいつものように小さな鍵盤ハーモニカを手に取り、軽やかなメロディーを奏で始めた。

大輝はその音に耳を傾けながら、自分も何か一緒に演奏したいと強く感じた。


「奏音ちゃん、俺も何かやりたい。でも、ギターを持ってきてないし…」


奏音はにっこり笑い、「じゃあ、歌ってみようよ」と提案した。


彼女が奏でるメロディーに合わせて、大輝はぎこちなくも声を出して歌い始めた。


声はまだ不安定で音程もあやふやだったが、奏音はそれでも大輝の歌声を受け入れ、楽しそうにリズムを合わせた。


「すごくいいよ、大輝くん。音楽ってね、上手じゃなくても、心から楽しんでやることが大切なんだよ」


奏音の言葉に、大輝は自分の中で何かが変わるのを感じた。


音楽を楽しむ心、そしてその楽しさを共有することの素晴らしさを、彼女は教えてくれたのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


現在の大輝は、あの時の感覚を思い出しながら、ギターを弾いていた。


奏音との音楽の時間は、彼にとって宝物であり、その宝物が彼の音楽の原点となっている。


「奏音ちゃんと一緒に、もっと音楽を作りたい」

その思いが、彼の心を再び燃え上がらせた。


今は離れている奏音と再び音楽で繋がりたいと、大輝は強く願った。


彼女が送ってくれたデモ音源が、彼にとってその新たなスタートラインになると確信していた。


「絶対に、約束を果たすんだ…」


大輝はその決意を胸に、さらにギターの練習に熱を入れた。


奏音との再会を心に描きながら、彼の指は力強く弦を弾き続けた。

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