第12話「奏音との出会い」
大輝の指がギターの弦を弾くたびに、音楽室には新たなメロディーが響いた。
しかし、彼の心にはまだ、過去の記憶が鮮明に残っていた。
奏音との出会い、そして音楽を通じて繋がった二人の絆。
それらが今の彼を形作っているのだと実感する。
大輝はその思い出の中でも、特に忘れられない出来事がある。
小学校の音楽発表会のことだ。あの時、大輝は初めて人前でギターを弾くことになり、緊張で手が震えていた。
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発表会当日、教室はたくさんの生徒と保護者でいっぱいだった。
舞台裏で、大輝はギターを握りしめ、深呼吸を繰り返していた。
隣には奏音がいた。
彼女はピアノの前に座り、静かに微笑んでいた。
「大輝くん、大丈夫だよ。私たち一緒だから、ね?」
その言葉に励まされ、大輝は舞台に立つ勇気を振り絞った。
奏音のピアノが始まると、彼もギターを弾き始めた。
指は震えていたが、奏音の音色が彼を支えてくれていた。
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夕陽が音楽室の窓から差し込む頃、大輝はその発表会での出来事を思い出し、奏音への感謝の気持ちが込み上げてきた。
彼女との約束があったからこそ、今の自分があるのだと。
「もっと、上手くなりたい…」
大輝は自分自身にそう言い聞かせるように、再びギターの弦を強く押さえた。
奏音に少しでも追いつくために、彼はひたむきに練習を続ける決意を固めた。
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