第23話 共和国にて case-3

セイフォンと街へ出かけると、いかにも大都市といった風貌でいろんな形の家や様々なお店が仲良さそうに所狭しと並んでいる。



「それにしても、この国は栄えているでござるな。」

セイフォンは、のんきにあたりを眺めながらいった。



「そりゃ、世界的にもこの国くらいしっかりした経済を持ってる国は少ないから。」

パプリカは答える。




彼女たちが街を歩いていると街の中心部に一際に目立つ建物があった。

中からは絶えず人の悲鳴と絶叫が聞こえており、いかにも繁栄という言葉の象徴のような建造物だ。




「それにしても、よく飽きないわね。」

パプリカは冷ややかに言った。




「なにせ剣闘はこの国の中でも最高の娯楽ですからな。朝は猛獣狩り、昼間は裁判、午後からはずっと剣闘士たちのバトル、夜は宴会の会場と来た。それがしの出身国にもこれほどの会場はなかったでござるよ。」

セイフォンは目を輝かせている。




「もう少し穏やかにやれないものかしら。」

彼女は以前として否定的な反応。




「パプリカ殿は、既に中に入っているのでござったな?」




「まあね、誘われて。」



「どうでござったか?」



「自分の目で見ればいいじゃない。」




彼女たちが他愛もない会話を繰り広げていると奴隷のオークション会場に出た。




この国の知識層は基本的に働かない。身の回りの世話を奴隷に任せて、自分たちはもっぱら芸術活動や政治、研究、遊戯を嗜むのである。




「それにしてもものすごい数でござるな。」

セイフォンは奴隷市にて、販売されている奴隷の多さに目を丸くしている。




「当然よ。征服した国の住民は基本的に奴隷になるんだから。」



パプリカたちが遠目に冷やかしていると奴隷市の中で動きがあった。



「健康な男児、それも14歳〜18歳の者を全部購入したい。」

そう言ったのはいかにも貴族風な男で、腰にはサーベルを指しており、頭には羽付きの帽子をかぶっている。



「これは、マスウェル様、いつもご贔屓に。今回の遠征ではかなり質の良い奴隷を獲得しております。」

揉み手で近寄るのは先ほどまでふんぞりかえっていた男だ。




「パプリカ殿、あの男は。」




「うん。リストにも載ってたけど、このコロッセウムの副支配人。マスウェルなんとかだね。」




「かなりの大物でござるな。」

セイフォンは必要以上に囁き声で話しかける。




「剣闘大会に向けての人員補強ってところかしら。」

パプリカは答える。



彼女たちが噂話をしていると、声をかけるものがあった。



「あら、パプリカ。こんなところでなにしてるの?」

同僚のグルファトだ。



パプリカ等は、そちらの方を向く。




「なになに、お友達?紹介してよ。」

グルファトはセイフォンを見てそういった。




「そう。彼女とはちょっとね。名前はセイフォン。」

パプリカは関係をぼかすようにいった。




「セイフォンでござる。今日からパプリカ殿と一緒に暮らす故、お見知り置きを」

セイフォンは丁寧に自己紹介をした。




グルファトは目をパチパチさせると、

「あら、もしかしてそっちだったの?早く言ってよ。通りで反応悪いと思ってたのよね。」




パプリカは一瞬意味がわからなかったが、誤解されていると認識した。

「違うわよ。セイフォンとはそんな関係じゃ」

パプリカが同意を得ようとセイフォンの方をみると彼女は頬を染めていた。





「いいのよ。人それぞれなんだから。でも、あの子達がこれからどんな剣闘士になっていくのか想像するといてもたってもいられなくなるわ。」

グルファトは、奴隷等を見ながらそう言った。




「だから、」

パプリカが以前として誤解を解こうとするもグルファトには届かない。




「気分転換がしたくなったら、お姉さんに相談するのよ。男ってのもそれなりに良いのよ。筋肉隆々でね。

セイフォンちゃんも。」

グルファトはこちらにグットサインをするとすぐにどこかに行ってしまった。





「解せぬ。」

パプリカは呟く。





「パプリカ殿、そろそろいくでござるよ。」

セイフォンは状況をあまりよくわかっていない様子であった。




パプリカは、購入の手続きが終わり、移動の手配を行なっている奴隷等の中に自身と同じ猫耳のものを見た。



彼、いや彼らの目は少しも笑っていなかった。

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