第21話 共和国にて case-1
一発の弾丸が歴史を変えることは珍しくない。
パプリカは今、熱狂的な民衆の中に居た。
「刺せ。そのままやっつけろ。」
周りからは物騒なヤジが飛ぶ。
建物の中心では、上半身裸のまま、剣をもって戦う男たちがいた。
彼らは命の奪い合いを繰り広げている。そして、決着はついた。
片方の男が腕ごと斬られた。
「やれ。そのまま首を刎ねろ。」
腕を刎ねられた方の男は命乞いの素振りを見せるが、民衆はブーイングで対応する。
攻撃を加えた方の男は、民衆の対応を見て剣を振り上げた。
そして、宙に男の首が舞った。
男が生首を掴み持ち上げると観客の盛り上がりは最高潮となった。
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パプリカは任務遂行の為に、共和国に入った。
この国の礎は、異世界から転生をしてきた王が一から作ったとされている。
それから時を経て、今でも王家は存在しているが初代の王の言いつけを守り、彼の死後は貴族の元老院を中心とした共和制の政治体制を敷いているのである。
この国は出来上がってまだ数百年だが、強大な軍事力と知識人によって支えられた文化と技術によって世界でも有数の繁栄国であった。
パプリカは、”平民の身分”として街の中心部から少し離れたところに住まいを置き、タベルナという店で働いている。
「もう少し文明的なところと聞いていたのだけど。」
彼女は、先程の決闘が行われていた円形闘技場にてため息をついていた。
「パプリカ、最高だったでしょ。」
女性がパプリカに話しかけた。彼女の名前は、グルファト。パプリカと同じ職場で働いている同僚だった。
「そうね。刺激的だったわ。」
パプリカは答えた。
「私は彼の血を混ぜたリップを購入して帰るわ。あなたもどう?」
「私はいいかな。」
パプリカはドン引きしている。
「そうかい。まあ後で貸してあげてもいいわよ。」
「遠慮しておくよ。」
「それじゃ、また明日ね。」
グルファトは去っていく。
パプリカは、未だ熱狂に包まれた闘技場、すなわちコロッセウムにて今後のことを深く憂いた。
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「にしても、今回の任務は無茶苦茶ではござらんか?」
東国風の見た目の女性がパプリカに同意を求めていた。
「何か考えがあってのことでしょう。」
パプリカは口ではそう答えたものの概ね彼女の意見に同意だった。彼女は家に戻ってきた。そうすると程なくして彼女が尋ねてきたのである。
今回の任務とは、数ヶ月後に行われる闘技場のイベントでこの国の王の戦いに細工することであった。
「いかにパプリカ殿の魔法が強力でも、狙いが定まらなければ埒があかぬよ。」
彼女は嘆いていた。彼女は、東の国出身である。
「そのためにセイフォン。あなたが来たんでしょ。」
「それはそうでござるが。」
セイフォンはしょんぼりしている。
「大丈夫。どうにかして王と一騎討ちをする剣闘士にあたりをつけられればそうは難しくないはずよ。」
「とにかく情報収集に努めるでござる。」
セイフォンは、街で売られている”共和国の歩き方”という雑誌を手に取っていた。それなりに高価であったはずだ。
剣闘士とは、この国の民衆の娯楽の頂点に君臨する存在。
その多くは戦争捕虜となった奴隷や何らかの事情で破産をしてしまった貴族、平民。そして魔族までもが含められる。
この国は、未だかつてないほどに他種多用な種族と娯楽、文化が入り乱れた国なのであった。
「転生者ってほんとかしら。」
パプリカは、セイフォンが手に取る雑誌を横目にみながら、転生者の存在に思いを巡らせた。
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