第23話:いいから逃げろ
今日は短いです。すみません!!
いつもコメントやレビューありがとうございます!!とっても嬉しいです!
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衝撃音のした方向に近付くと子供が絶叫する声と煙、それと肉が焼け焦げる匂いが漂ってきた。
まさか――。
急激に不安が沸き起こる。
「おいおい……まさか子供が燃やされてたりとかしないだろうな」
アンバーはちらっと俺を見下ろし、答えた。
「バカね。これは焼肉の匂いよ」
そういえば今夜は肉パーティーだった。
「人が焼ける臭いとこれは全然違うわ。かいだことないの?」
「ない」
「そう。それは幸せなことだわ」
お姉さんいわく、弟は興味がないものは視界に入らない体質なので孤児のことも見えていない、なので積極的に危害を加えたりもしないだろうとのことだ。なんだその体質。
アラフォーのお姉さんに抱えられて食堂に飛び込むと――そこでは壁が崩れて夜風が吹き込む中、絶叫しながら一生懸命肉に喰らい付くたくさんの子供たちがいた。
「うぎょおぉぉぉーっ!!」
「うまっ!! この肉うまいよモグモグ」
一部の女子たちはさすがに逃げようとしているが、例の三人を含む大部分は肉から離れられないようだ。
グレゴリオは……!?
周囲に目を凝らすと食堂の奥、カウンター形式の調理場に金髪の男の姿が見えた。
「ねえねえ、このあと最強になったボクと一緒に食事でもどう? こんな安い肉じゃなくてさぁ、火牛のフィレステーキをご馳走してあげるよグフフ」
まーたシスターを口説いてる!
姉を倒すのかナンパすんのかどっちかにしろ。
アンバーは苦虫を噛み潰したような声で「あのバカ……! 一族の恥晒しめ!」と呟く。
「大変ですね」
「そう。大変なのよ。……ミヤシタ、自分にシールドは張れる?」
「ああハイ。『シールド』。――張りましたよ」
「よくできました。――じゃあ、行ってらっしゃいっ!!!!」
「え!?」
ぐわん、と片腕で持ち上げられ、その高い位置からブーツを履いたアンバーのピンと伸びる左脚が目の前に見えた。
こ、これは――投球フォーム……!?
「ふんッ!!」
「うわああぁぁぁぁ」
ぶん投げられた! 嘘だろババア!!
俺は弾丸のように食堂を突っ切り、奥の調理場へと突っ込む。
カウンターの向こうにいるゴリオの顔がみるみるうちにアップになり、奴は驚愕の表情と共にこっちを向く。このままじゃ顔面と顔面で衝突だ! それだけは絶対に耐えられない。そう思った俺は顔の前で両腕をクロスさせ、顔を守った。
調理場の壁を一部破壊しながらゴリオに突っ込み、その勢いのまま二人で奥の壁にめり込む。
シールドのおかげで無傷だが、あのババアやることが無茶苦茶だな!?
「う……」
「ヒロム!? なんで……!? だ、だいじょうぶ!?」
パラパラと壁の破片が落ちてくる中、シスターは俺の名前だけを呼び駆け寄ってきてくれた。
「だいじょうぶです……。ちょっとビックリしたけど」
ゴリオはさすがに不意打ちが過ぎたのか俺の体当たりをまともに喰らったが、ちゃんとシールドをかけていたようで傷ひとつなくムクリと起き上がる。
「くっ、一体なにが……はっ! 姉上!?」
食堂を挟んで入口と奥の調理場で領主一家の姉弟が向かい合う。
姉アンバーは自らが着ているドレスの腰のリボンを引っ張ってほどいた。
ばさりとスカートが取り外され、その下からはズボンにブーツという女戦士のスタイルが現れる。
アンバーは収納魔法から銀色に光り輝く剣を取り出し、構えた。
「許さないよ、グレゴリオ」
子供たちは目を丸くしながらも食べるのをやめず、まるで日曜日の朝、朝食を食べながらニチアサを見ているかのように姉弟に釘付けになった。
俺はそっと魔素に命じ、子供たち全員にシールドをかけた。
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