第17話 ゲームオーバー
あれからもう一週間が経過していた。
もうすぐ夏休みも終わりを迎えようとしている。
はるとは心にぽっかりと穴が開いてしまい、まるで自分がロボットにでもなったかのような気分だった。
はるとは、お母さんに付き添われて町の集会所にある会議室に入った。
そこには役所の人たちとPTAの人たち、町のお偉いさん達が集まっていた。
ホワイトボードには『三丁目広場の不当な占拠行為に対する処遇について』と大きく書かれていた。
はるとはすぐに理解した。これは、みんなの草原を勝手に自分たちの物にしたことについて、どんな罰を与えるのかを決める会議ってことだ。
はるとは、恐らく罰を受ける側の重要な人物が座るであろうホワイトボード正面の席に案内された。
両隣には既にひまりとひまりのお母さん、あさひとあさひのお母さんが座っていた。
はるとのお母さん、お父さん、町のお偉いさん達はホワイトボードを背にして三人の正面に座っている。
「今日はお忙しい中、私の息子と息子の学友たちのためにお集まり頂き、誠に申し訳御座いません」
お父さんが立ち上がり、町のお偉いさん達に向けて深々と頭を下げた。
それに続くかのように、お母さんとひまりのお母さん、あさひのお母さんも頭を深く下げた。
「公務員として、大人として、息子のことを誰よりも模範的であるように厳しくしつけなければいけない立場にありながら、今回はこのような事態を招いてしまいました。仲の良いお友達だけでなく、多くの子供たちを巻き込んで行った悪事は、決して許されるべきではありません。この会議は弁解するための場ではなく、どの程度の処罰を行うべきかを検討する場だと考えております。ご意見のある方は、遠慮なくその旨ご頂戴できれば思います」
僕たちはじっと黙って座ったまま、弁解することも謝ることも許されそうにない雰囲気にすっかり飲まれていた。
すると、ポツポツと偉い人達が話し始めた。
「まぁ、原状回復は当然だな」
「公共スペースの占有は有料だし、かなりの日数を宣教していたと思うが一体幾らになるんだ?」
「勝手に野菜とか作ってお小遣い稼ぎしていたのでしょ?公共の場を占有してお金儲けまでしているだなんて、あり得ないわ」
会議では様々な意見が挙がった。
勿論、全てその通りだと思ったし、ロボットになった僕は反論するつもりすらなかった。
ふと横を見ると、あれだけ威勢のいいはずのあさひでさえ、抜け殻のようになって俯いたままだった。
ひまりの方は、恐くて見ることが出来なかった。
僕はただ、一秒でも早くこの時間が終わればいいなと考えながら壁を見つめていた。
しばらく大人たちが話し合った後、僕たちの処罰が決まった。
そして、お父さんから改めて会議室にいる全員へ向けて発表があった。
・本人たちが責任をもって原状回復を行うこと
・原状回復後は、夏休み終了まで自宅待機すること
・占有していた期間に相当する費用は保護者が支払うこと
「他に意見がなければ、これをもって決定、解散とします」
誰も意見がないことを確認し、会議は滞りなく終了した。
僕は特に何も感じなかった。あとは淡々とこなせばいいだけの話だからだ。
区画整理した場所を元に戻して、畑の野菜も全部引っこ抜いて、お店の看板や商品棚も壊す。そして、しっかり勉強して家の手伝いもしてお小遣いもお年玉も全部使って弁償すればいいだけ。
そう、たったそれだけ。それだけなん、だから……
気が付いたらはるとは、大粒の涙をこぼしてわんわん泣いていた。
二人もずっと下を向いたまま、悔し涙を流していた。
大人たちが会議室を出ようと立ち上がり始めた時、突然ガラガラと扉が開いて誰かが入ってきた。
「いやぁ、遅れてすまんのう。ついうっかり話し込んでしまっておったわい」
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