第8話 あさひの最強計画
翌日、はるととひまりは約束通りに太陽町へ行ってみたが、いくら待ってもあさひは来なかった。
ひまりは待っている間、時間が勿体ないからと言ってシロツメクサやクローバーを使って小物を作っていた。
はるとは塾に遅刻するわけにはいかないので、ギリギリまで区画整理を進めながら待っていたが、仕方なくひまりを残したまま塾へ行くことにした。
「まだ少しだけ残っていたタンポポの花のおかげで可愛く作れてよかった。それにしてもあさひ君、今日はどうして来なかったんだろう?」
夕方になったので、ひまりは帰り支度をして作った小物を一人で無人販売所に持っていくことにした。
作った小物の状態を確認をしながら無人販売所に着いたひまりは、目の前の光景にギョっとした。
「……なんで、こんなに散らかっているの?」
ひまりが小物を販売していた棚には、割りばしを使ったいろんな形の工作物のようなものが乱雑に積み重ねられていて、まるで鳥の巣のようだった。
「もう、一体誰がこんなイタズラしたのかしら!」
ひまりは、積まれている割りばしを片付けようと手を伸ばしたが、ふと棚の横にある貼り紙を見て手が止まった。
『どれでもひとつ700えん』
「うわぁ……」
ひまりは深く考えるまでもなく誰の仕業なのか、その人が何を考えているのかすぐに分かった。
きっとその誰かさんは、あと数日は太陽町に来ないのだろうなと思いながら、今日のところはそのまま帰ることにした。
帰っていつも通り家の手伝いをしたり、弟の面倒を見つつ、明日からどうなることやらと頭を悩ませながら眠った。
「ひまりー、そういえばあの後、アイツ来たか?」
「来なかったよ。多分、今日も来られないと思うよ」
「ん、来られない?まぁいいや、アイツがいない方が作業捗りそうだし。それよりさ、そろそろ野菜の収穫をして無人販売所に置きに行かないか?」
「そうね、確かにそろそろ収穫してもいい頃かも。今日、行ってみよっか。私、お家から園芸用のハサミ持っていくから、ちょっと待っててね」
ひまりは、家から園芸用のハサミを二つ持って戻ってくると、二人で分担して枝豆とラディッシュを収穫して無人販売所に向かい、さっそく収穫してきたとれたて新鮮野菜と昨日置けなかった小物をキレイに並べた。
「……もうない、か。多分だけど、明後日ぐらいにはあさひ君も来ると思うよ」
「なんで明後日?まぁいいや、売れたかどうかまた明日、二人で確認しに来ような!最近、成績がヤバいから今日はもう行くわ!」
はるとは、そう言い残すとその足で塾へと行ってしまった。
ひまりは、はるとの後ろ姿が見えなくなるまで見届けると、最後にもう一度ちゃんと野菜と小物がキレイに並べられているかを確認してから家に帰った。
「どうか、あさひ君のためにもたくさん売れますように」
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