第12話 暖かい君の手
私が私の知らない未来で自殺していたなんて…
信じられなくはなかった。
私はずっとここ最近死にたかった
けれど、死ぬ勇気がなかっただけだった。
死んでないだけ
この言葉が今の私にはぴったりだと思った。
そして彼が、私の死んだ未来から私を救いに戻ってくれたのだった。
なんだかよく分からないし、彼が時を超えて戻ってきたことは信じられないし、頭が整理出来ない。
彼は私に向かってこう言う。
「葵。これが君の名前…だよね?」
「えっ…なんで…私、言ったっけ…?」
一度も彼に言っていないはずだった。
すると彼は少し微笑んで私に言った。
「僕と同じ名前なんだ。忘れないよ。
未来で君の名前を知った時、もっと早く知りたかったって、もっと君のことを知っていたら未来が何か変わったかもしれないって、ずっと後悔していたんだ。」
本当に…未来で私と会っていたんだ…
すると彼は静かに泣きはじめた。
私はどうすればいいのか戸惑い、オロオロした。
「僕は葵さんを、ただ目で追いかけていただけだった。君を…葵を、救えたかもしれないのに。」
彼は涙を流しながらそう言った。
「人が生きている理由は、僕には分からない。だけど、君が…葵が生きている理由は、僕に君自身のことをたくさん教えるために生きてるんだ。
僕が葵に、色んな幸せを教えるために、生きてるんだ。君が家族から貰えなかった分の愛は僕があげる。君が知らない綺麗な景色は僕が見せに行く。君がまだ食べたことの無い美味しいご飯は僕と一緒に食べに行く。君の知らない幸せを、君は知るために、生きてるんだよ。」
彼はそう言って私の手を握った。
彼の手は温かかった。
私は気づいたら涙が溢れていた。
私はずっと、私の手を握ってくれる人に出会いたかった。私を見つけて欲しかった。誰かに生きてていいんだよって、言って欲しかった。
彼と話す時、毎回なんだか懐かしかった理由。これは、私は彼と会うのが2回目だったからなのか。
なんだか心のモヤモヤがなくなった様な気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます