第11話 彼女に会いたい
彼女のお通夜には、同じクラスだった友達がほぼみんな参加した。もちろん僕も参加した。
その時に彼女の名前を初めて知った。
星野 葵(ほしの あおい)
という名前だった。
綺麗で美しい名前だった。
彼女の容姿に似合った名前だと思った。
彼女のあの美しい横顔や容姿を思い出したら涙が出てきた。
本当にもう居ないなんて信じられなかった。
どうしてあの時声をかけてあげられなかったのか。
どうしてあの時彼女に、葵さんに寄り添ってあげられなかったのか。
僕は悔やんでも悔やみきれなかった。
その日から僕は、まるで死んだように生きた。
彼女の命を救えなかった。
あの時に救えたのはきっと僕だ。
毎日そんなことを考えて過ごして、僕の心はどんどん壊れていった。
ある日僕は、ふらふらと学校の帰り道から歩いていた時、トラックに気づかずに道路を渡ってしまった。
目の前にトラックのライトが見える。
眩しい…
これで僕も天国の彼女へ会いに行って謝れる。
そんなことを考えて僕はゆっくりと目を閉じた。
気づいたら僕は、いつもの部屋のベッドの上にいた。
あれ…死ねなかったのかな
僕はゆっくりと起き上がる。
すると、僕はいつもの部屋着を来ていた。
どこも怪我をしていない。
おかしい
僕は不審に思い、当たりを見回した。
自分の部屋だった、
するとふとカレンダーが目に入り、今日の日付をスマホで確認してみる。
9月……!?
なんと僕は、引越しをして転入してきたあの日に戻っていた。
時が戻るなんてことあるのか…?
僕は何も信じられなかった。が、下の階から母親の声がする。
「あおいーーご飯だよー。」
僕は慌てて返事をする。
「あ、はーーい。今行く。」
僕は急いで下の階へ降りていった。
「今日から新しい学校頑張ってねー」
母親はのんびりと僕へ話しかけた。
僕は状況が飲み込めないまま返事をする。
本当に時が戻っているのか…?
ニュースも全部過去のもので、自分以外全て9月に戻ってしまっていた。
「いってきます。」
僕は戸惑いながらも家を出た。
早く
早く
早く早く彼女に
葵さんに
会いたい
僕は担任の先生に促されるまま教室に入る。
2回目の自己紹介
僕は教室に入るとすぐに葵さんを探した。
いた
彼女は生きている
初めて彼女を見た時と同じように、
綺麗な瞳で窓の外を眺めていた。
僕は何も無いかのように自己紹介をはじめた。
「水上です。えっと…」
僕は自分が何を話したのか覚えていない。ただ彼女のことを考えていた。
自己紹介が終わり、僕はずっと彼女に伝えられなかったことを伝えに行った。
君のことを何も知らなかった。
何も知ろうとしなかった。
ただ目で追いかけてただけで、
君を救うことが出来なかった。
「ねぇ、星野さん」
彼女は驚いたように顔を上げる。
僕は彼女を見つめる
「僕、君が知りたいんだ」
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