第10話 助けたかった

みんながこちらを見ている。緊張する…

自己紹介何話そう…



僕は親の仕事の都合で高校生活最後の年の夏休み終わりという珍しい時期にこの学校に転入した。みんな珍しいものを見るかのような目で僕を見ている。そんなに見なくても…


「水上です。えっと…」


自己紹介最中、僕は辺りを見回す。すると、少しつり目で髪の毛がポニーテールで、退屈そうな目をした女の子を見つけた。

めっちゃ可愛かった。

僕はその子にいわゆる『一目惚れ』をしたのだ。その子のこと知りたい。仲良くなりたい。

そう思いながら僕の短い新しい高校生活が始まった。



けれども現実なんてそう甘くない。

まじで話す機会がない。いや、異性だもんそりゃあそうか…と納得しつつもなんだか悔しい。


僕は毎日登校してから下校するまで彼女のことを見つめていた。


名前すら聞けていない。

男子に聞けよって思ったそこの君、高校生が女子の名前を突然聞いたら絶対

「え、お前あの子のこと好きなの!?」

ってなるだろ。だから聞けないんだよ…


僕は毎日彼女の色々な姿を見つめて過ごした。




気づいたら11月。本格的に受験シーズンになってくる時期だった。みんな放課は単語帳とか参考書とか見ててなんだかちょっと居心地が悪い。

僕は親の仕事を継ぐため、私立の大学に進むつもりでいた。総合型選抜なので、もうそろそろ結果が出るはずだ。みんなより一足先に合格を貰える安心と申し訳なさで複雑な気持ちだった。






僕はその日、学校に忘れ物をしてしまった。幸いなことに昇降口で忘れ物に気づけたので慌てて教室に戻った。


教室に入ると彼女がいた。

彼女の綺麗な目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。そんな泣いている姿も美しかった。


彼女の顔は苦しそうで悲しそうだった。


僕はなんて言ったらいいか分からず、ただ教室のドアの前で立ち止まってしまった。



すると彼女は僕の方を見て


「ねぇ、人ってなんで生きてると思う?」


と言い放った。


僕は困って何も言えなかった。初めて話す会話がこれって衝撃すぎる。

ただ、ずっと好きだった彼女がこんなに苦しそうに泣いているなんて、絶対なにかあったに違いない。




「ごめん、急に。なんでもない」




僕がなんて言おうかと考えていると、彼女は無理やり作ったような笑顔でそう言い、荷物をまとめて教室から出ていってしまった。
















次の日の朝、彼女が自殺したことを担任から知らされた。










後々知ったが、飛び降り自殺だったらしい。



最後に彼女と話したのは絶対僕だ。

最後に彼女が縋る気持ちで僕に助けを求めてくれたのに僕は黙り込んでしまったのだ。

僕が救えたかもしれないのに。


僕はただ呆然とした。その日は何も会話が耳にに入ってこなかった。

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