第9話 ずっと誰かにこうして欲しかった気がする
「私、本当は笑いたくないっ……みんなが好きって言ってくれる私の性格は…全部嫌われないようにって…全部全部作り物なのっ…。みんなに愛されてる私は私じゃない。私の本当の姿を見せたら…嫌われちゃうよぉ…」
私は泣きながら水上くんにそう話す。
もうきっと、上手く話せてなんかいなかった。
涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ただ叫ぶように言葉を吐き出した。
「お母さんも、お父さんも…私にただ勉強して欲しいだけだもんっ!!!私の本当にやりたいことなんて…やらせてくれないよ…なんで私生まれてきたの!?親の言う通りに生きるため…!????なんで自分が生きてるのか…わかんなくなるよぉ…」
私は自分で自分を抑えられなかった。
感情が溢れ出て止まらなかった。
こんなこと今まで無かったから怖かった。
水上くんは何も言わずに、ただ私の背中をさすってくれていた。
私はついに言ってしまった。
「もう死んじゃいたいよぉ…」
と。
すると水上くんは私を強く抱き締めた。
そして、悔しそうに私に話しかけた。
「ごめん、僕がもっと早く気づいてれば…こんなになるまで我慢させずに済んだかもしれないのに。だいぶ前に連絡くれた時から、ずっと気になってたんだ。星野さんが苦しんでること、気づけたはずなのに…よく頑張ったね。本当に星野さんは偉いよ。よく生きてたね。話してくれてありがとう。頑張ったよ本当に。」
私は水上くんに抱きしめられたことに驚くよりも、自分の頑張りを認めてくれた彼に、がんばったねと言ってくれた彼に、生きてることを証明してくれた彼に
ただ抱きしめていて欲しかった。
誰かに抱きしめられないと
私はこのままどこかへ行ってしまいそうと思ったから。
私が少し落ち着くと、水上くんは私を抱きしめる腕の力を緩めて私の前に座った。
「星野さん、本当に話してくれてありがとう。よく頑張ったね。よく生きてたね。これからは…もっと僕を頼って欲しい。話しずらいこともあるだろうけど、何もなくても悲しい気持ちになったら言って欲しい。人が悲しくなるのに理由なんていらないんだよ。悲しい時は悲しい。苦しい時は苦しい。それでいいの。その気持ちを、無理やり抑え込まないで欲しいんだ。つらいでも、死にたいでも、全部僕に教えて欲しい。そしたら僕がまた、君を抱きしめに行くから。」
私は泣きながら頷いた。
どうして彼はこんなにも私に優しくしてくれるのだろうか。
どうして彼は私が欲しい言葉をかけてくれるのだろうか。
どうして彼は私のことをこんなに知ってくれているのだろうか。
どうして
どうして
「どうして…」
すると水上くんは
「君が大切だからだよ。ずっと君が好きだったから。だけど僕は…
君を救えなかった経験をした。だからもう二度と繰り返したくないからだよ。」
と言った。
そして彼は、ある過去について私に話してくれた。
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