第8話 溢れ出す涙と本音

私は水上くんと一緒に図書館に行った日、案の定母に居場所が特定されて怒られた。


その様子を父親はただ眺めているだけ。助けてくれない。

母親が絶対だから。


「どうせどこも大学なんて受からない」

「こんなバカに高いお金払いたくない」

「こんな風に育てた覚えないけど」

「早く出ていってほしいのに」


いつも言われる言葉

また今日も言ってる




結局勉強しろとしか言わない両親

過度な感傷に言葉の暴力


今思えばその時点で私の心は壊れる直前だったのかもしれない

だが当時の私は、いつも通りのことだったため何も気にしていなかった。


その日から私は眠れなくなった。






「星野さん、この本読み終わった〜。すっごい面白くて最後なんて……え、大丈夫…?」


授業後、水上くんが私に本を返しに来た時、驚いた顔をした。


「え……?何が…?」


私はなんの事なのか分からずに首を傾げた。


「クマすごいよ、めっちゃ疲れてるように見えるし…なんかあった?」


クマ…寝れないからかな。


「なんかいつからか忘れちゃったんだけど、最近本当に寝れなくて…それで疲れてるのかもしれない。」


すると水上くんは困った顔をして私にこう言った。


「親と何かあった…?」



親って……覚えててくれたの…?


私は信じられなかった。

彼に親の話をしたのは1度だけだ。

私はあの日、無理やり会話を終わらせた。自分から辛いと言ったものの、大丈夫と嘘をつき終わらせたあの会話を、彼は覚えててくれたのだ。


「え……」


私は思わず目を見開いた。そして何故か目から大粒の涙が溢れてきたのだ。



「あれ…なんで、ごめん、ごめんなさい、ごめんなっ…さ……」


私は溢れ出して止まらない涙に驚いた。そして水上くんに申し訳なく思った。

こんな目の前で号泣されたら引かれるに違いない。

だけれど私の涙は全く止まる気配がなかった。




「星野さん、1回外でよ。」


水上くんはそう言って私の手を握り、周りの人に私が泣いてるのがバレないよう、外に連れ出してくれた。









私たちは校舎の一番奥にある階段へ行った。

そこは普段は使われない教室が多い階のため、人は全くいなかった。


水上くんは私を階段に座らせて、自分も横に座った。


「ごめん…なさいっ…」


私は涙を拭いながら謝った。

謝らないと母親のように怒られるかもしれない

私は無意識にこの考えになってしまった。


すると水上くんは私を見て

「謝らないで。ダメだよ星野さん何も悪くないから、大丈夫。大丈夫だよ。落ち着くまで、思いっきり泣きな。」

と言って、私の背中をさすってくれた。



私は人生で初めて声を出して大泣きした。

長い時間泣いた。


親だけじゃない

無意識に気を使っていた高校生活

嫌われないようにみんなの前では笑顔でいたけれど

それも本当に疲れることで

家に帰っても怒られるから休めなくて

自分の居場所が分からなくて

誰にもこれを話せなくて


死んでしまいたいと思ってしまって

そんな自分が怖くて



私は水上くんに縋るような思いで話した。

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