第7話 大切な人
私は知っている
みんな『笑顔』の私が好きということを
私の取り柄は笑顔
だから、弱音を吐く訳にはいかない
ちょっと親と色々あって笑 急にごめんね。もう大丈夫だから
そう返信すると、私はスマホの電源を落とした。
もう寝よう
なんだかんだあっという間に水上くんと図書館に行く約束をしていた日になった。
私服で会うので、私は服選びにものすごく時間がかかった。
なんで私だけこんなに緊張してるのか不思議に思った。だが悩みに悩みまくったこの時間も、なんだか楽しかった。
「ごめん!待った?」
私は図書館の前に水上くんが立っているのを見つけて走っていった。
「あ、星野さん!おはよう。 ううん、大丈夫だよ。僕も今来たところ。」
かっこいい
思わず私はそう思った。
水上くんはモノトーンコーデというシンプルな服装だったが、本当によく似合っていた。
「じゃ、行こ!星野さん色々面白い本教えてね。」
「うん!」
私たちは並んで歩いていった。
図書館にいる間、水上くんの性格の良さと育ちの良さがわかる瞬間が沢山あった。
まず、何かを持ってくる時に私のものを先に用意してくれたり、道路では必ず車道側を歩いてくれたり、エスカレーターでは水上くんが下になるように並んでくれていた。
嬉しかった。
水上くんの小さな気遣いに心があたたかくなった。
図書館で色々な本を見ている途中で、水上くんはふと足を止めた。どうしたのかなと思い水上くんを見ると、彼はある本を見つめていた。
その視線の先を見ると、ある小説が置いてあった。
その小説の説明文には、主人公の男の子が好きだった女の子の自殺を機に、自分も後を追おうとするが色々な人に助けられ、強く生きていく。というストーリーだった。
水上くんはこの本に興味があるの…?何かあったのかと心配に思った。それが顔に出ていたのか、水上くんは私の方を見て、慌てたように言った。
「あ、いやたまたま目について…ちょっと気になっただけだから。」
「水上くんは、大切な人を無くしたの?」
しまった。無意識にとんでもなく失礼なことを言ってしまった。無くしていたとしたら、絶対に触れられたくない会話なはずだ。
すると水上くんは下を向き、少し考えたような表情をしてこう言った。
「うーん、そうだな…過去にね。けど今はもう大丈夫。全然平気。」
私は驚いて何も言えなかった。
とても悲しい気持ちになった。
彼になにかしてあげたい
本気で心から思った。
どうしたら私に彼の心の穴を埋めることができるのだうか。
「そんな悲しい顔しないで。本当に大丈夫だから。星野さんがいるだけでその悲しみは無くなるんだよ。」
彼はそう言う。
「え…私?」
どういうこと…?
私、そんなに水上くんの役に立ってないし連絡も毎日とってるわけでもないのに
どうして私が?
「どういうこと…?」
「それは……いつか言うね。だからそれまでちゃんと生きてること。ね?」
そう言って水上くんは冗談を言った子供のように笑った。
別に私生きてるし…
どういうことか結局教えてくれなかった。
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