第6話 助けを求めて

私が倒れてから1週間が経った。


私は倒れた日、結局親に迎えにきてもらったので水上くんにお礼を言うタイミングを逃してしまった。

何となく話すのが気まずく、お礼を言うタイミングを探っていたら1週間も経ってしまっていた。


今日こそ言わないと…


私は7限が終わり、掃除も終わったあとに水上くんの席に向かった。


「水上くん…あの」


私は緊張して声が震えた。なんで、、この前は上手く話せたのに。


「あ、星野さん」


水上くんはゆっくりと振り返ってくれた。


「えっと、あの。この前は、本当にありがとうございました…色々迷惑かけ…た」


「この前って…あ、星野さんが倒れた日?

全然迷惑なんて何もかけてないけど…?」


そう言って水上くんは微笑んだ。

とても優しい目をしていた。

なぜだか私はその瞳に泣きそうになる。


慌てて目を逸らして、会話を続けた。

「あの、お礼したくて。」

「え?お礼?僕何もしてないのになぁ。」

と彼は笑った。


「それじゃあ… ずっと行きたかった図書館があるんだ。一緒に来てくれない?それがこの前の日のお礼ってことで!」


本当に彼は優しい人だ。

私は笑顔で頷いた。



「星野さん、いつ空いてる?」

そう言って水上くんは携帯を取り出す。私もスケジュールを確認するために携帯を取りだし、確認した。


「えっと…来週なら土日空いてるよ。水上くんは来週どうかな?」


「僕はー…うん、空いてる。じゃあその日にしようか。あ、連絡取り合いたいからLINE交換してもいいかな?」


「うん。大丈夫」


私たちは連絡を交換し、その日はそこで解散となった。








「お母さん、来週の土日どっちか私出かけるから。」

「は…?塾行かないの?」

「うん、ちょっと行くところがある。」

「あんた受験生でしょ?そんな暇あるの!?」

「図書館だもん。」

「だったら塾でもいいでしょ!?」



また始まった。

受験生だからって私の行動を全て制限してくる母親に嫌気がさす。もうやめてくれ。

私はどんどん不機嫌になっていく。


「わかったわかった。もういいなんでもない。」

私はそう言い残すと自分の部屋にこもった。最近親に怒られないために嘘をつくことが増えた。でもこれは、自分を守るための嘘だから。きっといいよねと自分に言い聞かせる。




水上くん

こういう時に話を聞いて欲しい



私は気づいたらこう考えていた。


親の話はあまり人には話したくない。

理由は明確で、誰も私の辛さを理解出来ないと思うからだ。

人の辛さはその人にしか理解出来ない。全く同じ環境下で育ってきた訳では無いので、理解しろと言うのと無理がある話だ。


だけど、話を聞いて欲しい。

慰めて欲しい。

頑張ったねって、笑いかけてほしい。


そう思ってしまった。



私は気づいたら水上くんにLINEを送っていた。



水上くん疲れたよ




私が水上くんに初めてLINEを送ってから5分も経たないうちに返信が来た。



どうした?何かあった?



私は気づいたら泣いていた。

どうしてか分からない。

ただただ涙が溢れていた。

疲れてるのかな。


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