第5話 忘れられないスポーツドリンク
本当に暑い
私は額の汗を拭う。普段あまり汗を書かない体質の私でも、今日の気温は汗が体から吹き出る程だ。
今日は体育祭練習で体育が外になった。ただでさえ体調が良くないのに、この気温はキツすぎる…
私はリレーのバトンを握りしめた。
「水上くん、バトンどっちの手で貰う?」
私の次に走るのは水上くんだった。
水上くんにリレーの持つ手を確認しようと声をかけた時、私の視界はぐにゃりと曲がった。
私は突然のことに驚き、立っていられなくなってしゃがみこんだ。
「星野さん…!?大丈夫?どうした?」
水上くんが慌てて駆け寄ってくる。
「だい…じょう…ぶ…」
私は勝手に口が動いていた。だが体が追いついてこない。
「大丈夫じゃないでしょ。立てる?」
水上くんは手をさし伸ばしてきてくれた。だが私はもう視界が普通じゃなくなっていた。
ぐにゃりと曲がった水上くんの顔、空、全てが歪んでいる。
すると急に息が苦しくなってきた。
上手く息が吸えない
「…っはぁ…はぁ…」
「星野さん!?…これは大丈夫じゃないな。星野さん、俺がわかる?先生呼んでくるね…」
水上くん
怖いよ
息が吸えない
助けて
体があつい
「…みずかみく…」
私は彼に手を伸ばそうとした。が、私の意識はそこで途切れた。
白い天井にカーテン。
すぐに私は自分が保健室にいることを理解した。
私…倒れたの?
私はゆっくりと起き上がり、カーテンを開けた。
保健室には誰もいなかった。
どうしよう…勝手に出ていったらまずい気がする。
私は倦怠感が抜けていなかったのもあり、またベッドに戻った。
ベッドに戻ったものの眠る気には慣れず、ベッド上に座る。
しばらくしたら、ガラガラッと保健室のドアが開いた音が聞こえた。
誰か来た
誰かが私のベッドのカーテンをゆっくり開ける。
水上くんだった。
「…!星野さん!目が覚めた?」
「…み…ず…」
私は水上くんを呼ぼうとしたが、声が出ない。
「あ、はいこれ。星野さんこれ飲んで。今さっき星野さんが倒れた時過呼吸になっちゃって、たくさん息吸っちゃったから。多分喉に負担がかかったせいで乾燥しちゃったかな。」
水上くんはそう言い、スポーツドリンクと思われるペットボトルを手渡してくれた。
私は一気にスポーツドリンクを飲んだ。
いつもより甘く感じる。
いつもより美味しいと感じる時は、体調が良くない証拠ってどこかで聞いたような…
「星野さん、どこか痛いとかある?大丈夫?」
「だい…じょうぶ。ちょっと体がだるいかも。」
「そっか、ゆっくりしててね。脱水症状だって言ってた。ちょっと保健の先生呼んでくるね。」
水上くんはそう言い、保健室を出ていった。
しばらくして保健の先生が来て、熱を測ったり症状を聞いたりなどした。
「あ、そういえば」
と、保健の先生が口を開く。
「ここまで運んできてくれたの、水上くんなんだよ〜」
「え…?」
私を運んだ…?
え、私重くない???
え、水上くんが…私を?
私は混乱した。と同時に恥ずかしくなった。
「あ、ゆっくりしていってね。まだ体調万全じゃないから。熱もちょっとあるみたいだし。」
保健の先生はそう言って机の前に座りパソコンを触りだした。
次水上くんに会う時、私はどんな顔をして会えばいいの…????
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