第3話 私の家族
「はい、これ。1冊選びきれなかったから3冊持ってきちゃった。」
「えぇすげぇ…わざわざありがとう」
次の日、私は水上くんに持ってきた本を渡した。昨日悩んだ末、あまりにも私が優柔不断だったおかげで3冊持ってくることになった。
水上くんに悪いなと思いつつも、小説の面白さを知ってもらいたくてつい持ってきてしまった。
「返すのいつでもいいからね。」
「え、めっちゃ僕読むの遅いよ?」
「いいよ笑 別に私何回もその本読んだし、新しい本買ったから大丈夫。」
「そっか。ありがとうね。」
「うん。」
朝、1時間目が始まる前に水上くんと喋れて、私はいつもより少し気分が良かった。
「ただいま。」
「あーおーいーちゃーーん!おかえりなさい!!」
私は家に帰ると、鈴を転がすような高くてキラキラした声で話しかけられた。私の姉の洸(ほの)だ。明るく元気でポジティブな、私と正反対な性格な姉。今は大学生で実家に帰ってきている。
あおいというのは私の名前だ。
「洸ただいま。」
「おかえりー!今日ね、今日ね私とママで夜ご飯作ったんだぁ!ね!ママ」
洸が母に話しかけると、母は機嫌が良いのか笑顔で頷いた。
良かった。今日は機嫌がいい。
私の母親は、洸がいるといつも機嫌がいい。私よりも洸の方が合うのだろう。私といる時はあんな風に笑ったり喋ったりしないのに。
「あおい、お風呂先入っておいで。」
機嫌のいい母が私にそう言う。ここで逆らうとめんどくさくなるから素直に従った方が良さそうだ。
「はーい。」
「ねぇねぇ洸も一緒にはいっていい??」
「はぁぁー?」
「お願い!!」
「別に…良いけど。」
「やったー!!ママ!あおいちゃんとお風呂入ってくる!!」
「はいはい。早く入っておいで。」
「はーーい!」
私は洸と一緒にお風呂に入った。
「…それでさ、それでさ」
「ずうっと喋ってるね、洸。」
「えへへ」
洸はお風呂に入っている間、永遠に喋り続けていた。大学のこと、彼氏のこと、友達のことなど…そんなにずっと喋ってて疲れないのか?と私は疑問に思った。
その時だった。
「最近さ、ちょっとしんどくて。」
「え?」
私は洸の予想外な言葉に自分の耳を疑った。
「バイトも忙しいし勉強もしないとだし彼氏もいるのにママからもメッセージ沢山来るからちょっとめんどくさくて…汗」
あ、この人は家での母親を知らないんだ。
私は洸が話す言葉を聞いてすぐに悟った。
家にいる時の方が酷い。私の方がもっと酷いこと言われてる。もっと酷いことされてる。洸は母から好かれてるからいいのに、私は嫌われてるからもっと悲しい思いしてるのに、なんであなたがしんどいとか言うの?
私は勝手に怒りが込み上げてきていた。
「それでさ〜」
「…がる。」
「え?」
「…もう、あがる。」
私は洸に冷たく言い放ってお風呂を出た。洸は何か私に話しかけていたが、私は洸の言葉など耳に入らなかった。いや、入れたくなかった。
私の方が苦しいのに
この怒りをどこにぶつければいいのか、私は分からなかった。
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