第2話 勉強熱心な彼との出会い
いつもの帰り道、私は何となく家に帰りたくないと思った。
私の両親は少し厳しい方だ。学力が全ての家庭で、幼い頃から常に勉強をしていないとダメだった。
でも、別に怒られてもご飯は作ってくれるし私を見捨てたりはしない。どの家庭も、こうやって子供に怒ることは当たり前なのかな。
だけど嫌なものは嫌だもん
と、私は自転車から降りて自転車を引き始めた。
現在時刻は19時。どこかに行こうとすれば行ける時間帯。少し考えた末に私は新しい本が欲しかったことを思い出し、精文館へ向かうことにした。
夏は日が沈んでも暑い。自転車から降りて精文館に入ると、店内はクーラーが聞いていてとても涼しくて気持ちが良い。
私はふぅと一息付き、新刊何が入ってるかなと店内へ足を踏み入れる。すると見覚えのある後ろ姿があった。
間違いない。あれは水上くんだ。彼はイヤホンをつけていて、手には何冊か参考書を持っている。
勉強熱心だ…
私は何となく気まずい気がして、遠回りをして小説コーナーへ急いだ。
お目当ての小説を見つけ、レジへ急いだ。
曲がり角のところで、私は他の面白そうな本を見つけてしまい、その本を眺めながら歩いていたら誰かとぶつかってしまった。
「…っ!すみません!」
私は慌てて顔を上げると、なんとぶつかったのはそう、水上くんだった。
「ごめんなさ…あれ、星野さんだ、ごめんね。あ、どこかぶつけたりしてない?」
心配そうに覗き込んできた彼の顔は、息を飲むほどに綺麗だった。茶色っぽい瞳に長いまつ毛。サラサラな髪の毛に少し高い鼻。私は思わず見とれてしまいそうになり、慌てて目を逸らした。
「本、好きなの?」
水上くんは私が持っていた小説に目を向けてそう聞いてきた。
「え、あ、うん。小説だけね。評論文は苦手なの」
私は少し恥ずかしくなって笑うと、水上くんはにこっと笑った。
「僕は小説が苦手なんだ。登場人物とか、わかんなくなっちゃうの。あ、そうだ。星野さん何かおすすめの本教えてよ。」
と言った彼の目は、キラキラ輝いてた。
「え、じゃあ…私本何冊か持ってるから明日学校に持っていこうか?」
「え!ほんと?嬉しいなぁ。ありがとう!」
喜んでくれる顔が嬉しくてなんだか懐かしくて、私はもっと彼のことを知りたいと思った。
私たちはお互いの家の方向が反対だったため、入口まで一緒に行き、その場を後にしようとした。
私はその時、ずっと心に引っかかっていたことを思い出し、彼に尋ねた。
「あ、水上くん。今日の朝言ってくれた、私を知りたいってどういう意味?」
すると水上くんは、真っ直ぐに私の方を向いてはっきりと言った。
「そのままの意味だよ。僕は星野さんのことをもっと知りたかったんだ。だからこれから星野さんのこと、もっと教えてね。」
どういうことなのかよく分からない。どうして私を?色々疑問に思うことはあるけれど、これ以上聞いても何も変わらないと思った私は、手を振って別れを告げた。
明日、何の本を持っていこう。
私はそんなことを考えながら自転車を漕いだ。
風が気持ちよかった。
位置情報を介して私の居場所を確認した母親からの
『寄り道してる暇なんてあるの?』
というメッセージを無視して
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