第1話 夏休みに来た転入生
汗が額を流れ落ちる。
クーラーの風が直接当たらない席。私は下敷きで自分の顔を仰いでいた。
今日も一日が始まってしまった
そう思いながら私は携帯の通知を確認しようと思い、携帯が入っているリュックのポケットへ手を伸ばしたすぐ、担任が教室に入ってきてしまった。
「もうちょっと遅く来てもいいのに…」
私はボソリと呟くと、携帯を取ろうと伸ばしかけていた手を引っ込めた。
担任の後ろに、知らない青年がいる。
誰だろう。転入生?この時期に?
高校3年生の夏に転入生が来るなんて、なかなかないだろう。
青年は少しタレ目で髪の毛はサラサラだった。背は低めで少し細めな体型だった。
「えーっとホームルームの前に少し。
今日からこのクラスに転入してきた水上(みずかみ)さんです。簡単な自己紹介してもらってもいい?」
「はい」
担任に自己紹介を促された青年は、少し緊張しながら教壇の前に立つ。
「水上です。えっと、テニスやってます。あと…ピアノも少し弾けます。短い間かもしれないけど、よろしくお願いします。」
ピアノと聞き、クラスメイトからわぁと小さな歓声があがった。
水上くんはぺこりと頭を下げて、指定された席に向かって歩き出す。
周りの女子はひそひそと彼の容姿について話していた。
まぁ私には関わりのないことだ。
そう思い、窓の外を眺めていたらいつの間にかホームルームが終わっていた。
「ねぇ、星野さん」
不意に私の頭に知らない声が降り注いだ。
「えっ…?」
見上げると、今朝の転入生だった。水上…くんだっけ。
「えっと、水上くん?だよね、どうかした?」
私は笑顔で彼に話しかけた。すると彼は私の目を見て真っ直ぐに
「僕、君が知りたいんだ」
と私に言い放った。
「え…?」
突然声をかけられ、しかもその内容が私を知りたい…?なんで私なの?転入してきたから、みんなのこと知りたくてみんなにこう言って回ってるのかな?なんて考えている私を見て、水上くんは私に笑いかけた。
「ごめんね急に。初めて出会った相手にこんなこと言われたらビックリするよね。ごめんね。」
「えっ、いや…うん」
私はなんて言えばいいのか分からず、曖昧な返事をした。
彼になんて言おうと考えている時、担任の先生が水上くんを呼んだ。どうやら渡したい書類があるそうだ。
「ごめん、ちょっと行ってくるね。」
彼はそう言って、小走りにかけていった。
一体さっきのはなんだったのだろう…。
「何何〜星野あの子と知り合い!?!?めっちゃイケメンだったじゃん〜」
さっきの出会いを不思議に思っていた私に、友達の宮口(みやぐち)が声をかけてきた。
「え、いや私も知りたい。私たち知り合いなの?」
「えっ、?星野何言ってんの…」
「いや、私もわかんないんだって。急に声かけられたの!!!」
「えぇ…そうだったんだ。え、こわ」
「えそれな?怖いんだけど…」
私は宮口に彼について聞こうとしたが、もう授業が始まってしまうから。と、席に戻られてしまった。
それにしても、一体さっきの水上くんの言葉はなんだったんだろう…。
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