一歩間違うと、神隠し……

 これは、わたしが高校生だったときのお話しです。


 その学校は、三階建ての校舎でした。何故か一年生が最上階という配置でしたが、まあまだまだ若いころなので、特に問題もなく、毎日上り下りしています。

 ……実習用のウール布が3メートルとかね。一反とかね?裁断するまでの期間はけっこう、大変でしたが。


 ある日、いつも通りに登校して階段を昇っていると、同じ中学からの同級生がいました。中学の時にクラスも一緒だったので、なんだかんだでおしゃべりする友人でもあります。


(踊り場でこっち見るから、そのときに声かけるかなー)

 そんなことを思いながら、くるっと手すりに沿って、身体の向きを変えます。


「……あれ?」

 思わず声が漏れました。目の前に、屋上倉庫への出入り口があるんです。もちろん、普段は閉鎖されていますから、外へ出ることは出来ません。

 いやそうじゃなくて、これは三階の階段から屋上へ出るための階段の上にあるはずの扉です。

 後ろを振り向くと、……普通に見慣れた三階の廊下です。


(寝不足だから、一瞬寝たかも?)

 ときどきやらかすので、そんなことを思いながら階段を下ります。

 と、そこに先ほど見かけた友達がいました。

 目が合うと、びっくりした顔になります。


「さっき、わたしの後ろにいなかった?」

「うん、いたと思う~」

「だよねー。あれー?」


・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


 とある学校での、実話です。

 成人後のとある職場でこの話をしたら。


「それ、一歩間違えば神隠しやん」


 ……あ。そうね、確かに。

 やっとそこで、怖さに気付いたのでした。 

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怖そうで怖くない少し怖い話。 冬野ゆすら @wizardess

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