怖そうで怖くない少し怖い話。

冬野ゆすら

たっぽん。

 ――たっぽん。


 さて皆様。この擬音、何の音だと思いますか……?



 ある日、妹に頼まれて、一週間ほど留守番をすることになりました。可愛い猫のお世話のためです。

 妹が拾ったその子は、血統書こそないけれど、どうみても純血種のロシアンブルー、しかも人懐っこい子のお世話なんて、こっちからお願いしたいくらいです。

(不思議なのは、妹が拾う猫ってことごとく純血種としか思えない猫なことですね)


 猫さんのご飯は、カリカリでした。言われた量だけ、きっちり計ってあげるのは、なかなか新鮮な気分です。そう言えば、お水はペットボトルからとか言ってましたが……冷蔵庫には、それらしきものがありませんよ?


「あー、なんか水道水でも平気みたい? いちおう、浄水器は通してるけど」

 蛇口に取り付けるタイプの浄水器。なるほど、確かに。まあ、…ミネラルウォーターは動物にはよろしくないと聞きますし、問題はないでしょう。

 ちなみにここ、名古屋です。今でも一軒家なら、生水が普通に飲めるんですよ。

 ということでお水の器も洗って取り替えて、警戒していた猫さんが膝に乗るくらいまで落ち着いて、夕飯も食べて、その夜。


「あれ?」

 冷蔵庫に買ってきた物を入れようとしたら、先客です。まあ一人暮らしで、冷凍庫にご飯を大量に詰め込んじゃう子ですから、片付け忘れたものくらいは不思議ではありません。でも帰宅まで持ちそうにないので、棄てておくことにして、先客さんを取り出しました。


 たっぽん。


「……え?」

 取り出したものは、どこのご家庭にもある、ごく普通の牛乳パックです。でも。


 たっぽん。


 ……消費期限……2週間前……。


  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


 中身は見ずに、ビニール袋に封印して、燃えるゴミに棄てました。

 


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