第25話 本当にちっとも分からない
「お話の最中に申し訳ございません。ですがここから一刻も早く離れるべきかと……」
犬のお姉さんが、私に向かって手を差し出す。
これはあれかな?私を抱っこしたいのかな?気持ちは分かる。犬の私はかわいいからね。
でも、なんだかちょっと照れくさい。地球にいたときには、こんな気持ちにはならなかったのに。やはり私も男だと言うのだろうか。
「師匠。本当にこの犬が次の大神様なんですか?俺には信じられないっすよ。威厳もないし」
「お前はハーフだから分からないだろうけど、私にははっきりと分かるの。この方に全てを捧げるよう、魂に訴えかける力を感じるわ」
全てを捧げるとは……あまり良いことではないな。
自分の人生は自分のもの。人にゆだねても、捧げても良くないと私は思う。
しかしどうしよう。なんかこの犬の女性にはバレてるみたいだし、もう話しかけても良いだろうか。
私の頭の中はまったく、全然、ちっとも整理できてないし、なんならオーバーフローしてるから、誰かに説明して欲しいのが本音だ。
「…………あの……」
「わ!犬が喋った!」
失礼だ!と思ったのも束の間、犬の女性の目から、真珠のようなきれいな涙が零れ落ちた。
「ああ、やはり、あなた様は次代大神様……なんという神々しいお声……」
「そうっすか?俺には、人生に疲れたおじさんの声にしか聞こえないっすけど……」
うん、犬耳イケメンの方が正しいな。
今の姿はかわいいポメラニアンだけど、元の私は立派なおじさんですから!
「私は茶太郎と申します。犬種はポメラニアンです。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「名前などございませんわ。
出た!カタカナ&知らない単語!さらになんか理不尽なこと言ってる!
名前がないって何⁉
こういう時は、一個一個聞いていく事が大事だ。ぷらねさんと会話したときと一緒だな。
「申し訳ございません。不勉強なもので教えてください。るぅ・がるぅ族って何ですか?」
犬の女性は、雷が落ちたかの様な衝撃的な顔をした後、哀しみに満ちた表情に変わった。
犬なのに、犬なのに、表情がはっきり分かる。なんでだろう?私も犬だから?
「やはり我々など、不要なのですね。フェンリル様と同じお考え……」
ううっと泣き始めると困ってしまう。違うのだ。私はこの世界のことが分からないだけなのだ。
と言うわけで、私はぷらねさんに話したことを再び話すことにした。
◇
「まぁ、あの高名な
倒れている悪者たちが再び起き上がってはまずい。と言うことで私たちは少し離れた場所まで移動した。
場所は洞窟の中。犬の女性とイケメン犬耳の男の子は、ここで野営をしていたそうだ。
犬の女性に色々聞いて、分かったことがある。
まず眷族。これは仲間のことだ。
るぅ・がるぅ族は大神様を守るための一族で、ふぇんりる様の前の大神様と、人間が恋に落ちて生まれた子供が始まりだ。
犬と人が恋に落ちる……だめだ。どうしても受け入れらない。受け入れなきゃいけないとしても、大河原敏行の常識が邪魔をする。
そんなるぅ・がるぅ一族は、ふぇんりる様が
故に、るぅ・がるぅ一族はこの世界の人々から迫害されていて、更に正気を取り戻した、ふぇんりる様の怒りを買い、放逐されて行き場を失い、ひとり、またひとりと死んでいき、あるいは殺され、今の生き残りはこの女性だけと言うことだ。
そしてイケメン犬耳は、るぅ・がるぅ一族の最後の男性と人間の女性の間の子。
しかもイケメン犬耳のお父さんは犬の女性の婚約者だったそうだ。
イケメン犬耳のご両親は、母親のご両親に殺され、残された子供を犬の女性が面倒を見ることにした……って、凄まじい昼ドラの世界だ。私が子供の頃に見た、昭和のドラマのような内容だ。
ドロドロした展開に、子供心に嫌悪感を感じたものだ。
いや、そうじゃない。そんなことはどうでも良い。現実逃避はやめよう。
でも現実逃避したいじゃないか!だって犬と人間の間の子。犬顔と人間の間の子。
私は次代大神様だが、人間との間に子供を作れるのか?とか思っちゃったじゃないか!
いや、どうやってとか、そんなのはちょっと恥ずかしくて……想像……しちゃったけど。
「ぷらねさんと紗枝ちゃんが一緒にいるはずなんです。しかも神様の話ですと紗枝ちゃんは聖女になったみたいで、会いたいんですがどうしたら良いのでしょうか?」
「ちゃたろー様のお力があれば、どこにいらっしゃるかお分かりになる筈です」
どうやって?と聞きたいけど、きっとそれは分からないと言われそうだ。
待てよ。思い出した。そう言えば、山根君似の神様がなんか言っていたな。そうだ!確か!
「すていたすおーぷん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます