第26話 すていたすを解読したい
「すていたすおーぷん!」と大声で言ってみたけど……何も出ないじゃないか!
取扱説明書なんてどこにも表れない!
そう言えば、山根君は取扱説明書を読まなかった。彼の基本方針は触ってみればなんとかなる!つまり、理解するより先に手が動くタイプだ。
会社の新システム導入の際も、『こうじゃないっすか~?』と言ってダミーシステムをいじりまくっては、ヘルプデスクに怒られていた。
お陰でシステムの穴が分かったと言っていたが……。
反対に説明書を読んで、更に指差ししながらやる、私は覚えが悪かった。
私が悩みながらひとつ覚えるうちに、山根君は10は覚えていた。世代もあるのだろうが、あれは羨ましかった。
さて、いつもと同じ現実逃避は置いておこう。
犬の女性と犬耳イケメンが不思議そうな顔で私見てるが、とりあえず気が付かないふりをしておこう。
山根君似の神様が教えてくれた『すていたすおーぷん』とはなんだろう。
ステータスは知っている。
私が若いころ、車を持つのがステータスとか、家を持つのがステータスとか言っていた。
意味を調べると社会的な地位とかそんな感じ。
次にオープン。これは開く……だよね?
となると、『開け、ゴマ!』みたいなイメージで何かを開くのだろうか?社会的地位を開く?見せる?そんな感じ?
社会的地位ではないのか。今の自分を見せる?履歴書を見せる感じ?ちなみに私は大型免許を持っています。
「…………あ!」
目の前に画面が出て来た。
名前が載っている。
大神候補:茶太郎、1歳
HP:99999
MP:99999
ATK:9999
DEF:9999
AGI :999
LUC:50
適正魔法:火、水、土、風、光、闇、召喚
仲間:紗枝(聖女)、ぷらね(エルフ)
スキル:SNS映え間違いなしのかわいいポーズ
その他:?&%!の加護
仲間になりたそうなわんこがいるよ
名前を付けてください(犬)
名前を付けてください(犬耳)
これが、何の役に立つと言うのだろうか……。
山根君似の神様を信じた私があほだったのだろうか。
そもそも、また英語だ。そしてこの雰囲気からみると、何かを略しているのだろう。
HP、ヒューレッドパッカードではないだろう。ホームページでもないよね?数字あるし。
MP、マーケットプライスではないか?ああ、メガピクセル?だとすれば、とても大きい容量だ。
ATK って何の略?DEF、AGI意味不明。そして9がたくさん並ぶ中、なぜかLUCだけは50。
LUC、想像もつきません。
そして適正魔法?これは何となく分かる。使える魔法だよね?
問題は、火と水と風は何となく分かるけど、土って何だろう?土を使って攻撃する?
もしくは大地の実りと与える?あ、森の木を大きくしたアレかな?肥料を作るイメージで良いのかな?
よしよしこれは分かったぞ。
次に光……ぴかって光れば良いのかな?目くらまし的な?その反対の闇は真っ暗にするのかな?目くらまし的な?どっちも同じようにしか使えない気がする。何に使えば良いのやら。
そして全く分からないのが召喚。
あれだよね?裁判とかで使われる言葉だよね?証人を召喚するとか、被告人を召喚するとかいうからね。
ふぇんりるさんはこの世界の魔物からも守っていると聞いた。
つまり秩序を守っているということだろう。
裁判所のように、犯罪者を召喚したりする?のかな?
なんとなく分かったような、分からないような。うん、これは引継ぎの際にふぇんりるさんに聞くしかないな。
仲間は分かる。これはOK。紗枝ちゃんとぷらねさんは確かに仲間!間違ってないね。
スキルは私の特技のことだな。私の編み出したポーズは最強だと言うことだ。うんうん。
その他の文字はバグっているな。誰かの加護?無視しよう。背筋がぞわッとした。なんとなく考えたくない。
そして最後のコメント。
仲間になりたそうなわんこがいるよ
名前を付けてください(犬)
名前を付けてください(犬耳)
これは目の前のるぅ・がるぅ族のふたりなのだろう。
(犬)が女性の犬。
(犬耳)がイケメン犬耳。
仲間にしたければ名前を付けろということなのだろうか。
どうしよう。人に名前を付けたことなどない私が、名前を付けることなどできるのだろうか。
と言いつつも頭が勝手に考えた名前がある。どうしよう。付けて良いのかな?
「ちゃたろー様?」
女性の犬がこちらをじっと見て、首を傾げている。
その様子からこのモニターみたいな、
私をどれだけ慕っているのか分かる。
それは私が大神候補だから。次期大神だから。
好きでそうなったわけじゃないけれど、先ほどの話を聞くに、私には彼らを養う義務があるようだ。
彼らは世界から嫌われているのだ。上に従っただけで好きで争っていたわけじゃないのに。さらに命令した上司(?)にも責任転嫁させらるなんて気の毒だ。
るぅ・がるぅ族はふぇんりるさんになぜ自分を止めてくれなかったのかと叱責され、放逐された。
だが上司の命令に逆らうことが難しいのは、一兵隊でしかなかった私は良く知っている。ましてやこの世界は道徳レベルが未発達だ。逆らうことはできないだろう。
「名前……つけても良いでしょうか?」
私がつぶやいた言葉に犬の女性が破顔した。
犬なのに表情が豊かだ。きっと人間になれば美人になれるだろう。
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