アロイカ・インベージョン・パートⅡ

 アロイカは諦めなかった。

 人類の政治システムを真似て、生き残ったアロイカの間で総選挙が行われ、アロイカ大統領が選出された。

 アロイカ大統領は地球侵略を任された。

 地球侵略を諦めることは、彼らの滅亡に繋がるからだ。総数の六割以上を失ってしまったが、アロイカは人類を滅ぼす為の研究を続けていた。

 もともと好戦的な種族ではない。

 人類に戦いを挑んだこと自体が間違いだった。そこでアロイカは再び人類の歴史について検証を行った。

 そう、アロイカが人類の歴史の記録だと思っている映画やドラマを見て、再び研究を行ったのだ。武力衝突に人類は勝利し続けてきている。アロイカは平和な種族だ。やはり、武力では叶わないという結論になった。

 アロイカ大統領は科学技術庁を設立し、科学者たちに命令する。

「どうすれば人類を滅ぼすことができるのか、至急、方策をまとめろ⁉ 火力では彼らに敵わない。野蛮なやつらだ。我々では歯が立たない。できれば直接、対決することなく、彼らを滅ぼす方法はないものか」

 そして、アロイカの科学者たちは、あることに気がついた。

――人類はウイルスにより何度も滅亡しかけている。

 ということだ。

 科学技術庁長官からの報告を受けてアロイカ大統領は決断した。「人類を滅ぼすにはウイルス兵器を使うしかない! 我が同胞たちの命を奪い去った、憎きやつらに絶望と恐怖を味あわせてやるのだ」

 かつてアロイカで大流行し、個体数を半減させた恐怖のウイルスを使用することになった。このウイルスを改良し、致死率百パーセントの超強毒性のウイルスを作り出すのだ。ウイルスの開発にアロイカの科学者は励んだ。

「気を点けろ! ウイルスは諸刃の剣だ。うっかり漏れると我々の間で蔓延してしまう」

 科学技術庁長官の指導のもと、ウイルス兵器の開発は慎重に、且つ、急ピッチで行われた。

 そして、ついにウイルス兵器が完成した。

「今こそ、地球人たちを滅ぼし、我がアロイカの理想郷を建設するのだ!」

 再び、アロイカの大艦隊が地球を目指した。

 アロイカ大統領の乗った旗艦を先頭に大艦隊が地球に押し寄せる。ステルス機能を使って地球の上空までやって来ると、アロイカ大統領は号令を下した。

「ウイルスをばらまくのだ!」

 世界中に散らばった艦隊からウイルスがまかれた。

「これで人類は全滅、我らの天下がやってくる」

 アロイカ大統領は喜んだ。

 ウイルス散布の翌日、人類は何時も通りだ。

「ウイルスには潜伏期間がある。徐々に効果が表れるはずだ」

 三日目、未だに効果は表れない。

「そろそろだ。明日には何からの兆候が表れるに違いない」

 ところが一週間経っても、一か月経っても、何の変化も現れなかった。

「どうしたのだ⁉ 何故、人類は滅びない」

 アロイカ大統領は科学者たちを問い詰めた。科学技術庁の長官が答える。「大統領・・・それが・・・どうやらウイルスが小さ過ぎたようで、彼らの血液にある白血球の相手にならないようです」

 ウイルスもアロイカ・サイズだ。体内に入り込むには最適だったが、人の持つ免疫システムに勝てなかった。

「それに・・・どうやら・・・」

 科学技術庁長官が口ごもる。

「何だ⁉ どうした?」大統領が問い詰める。

「ウイルスをばらまいてしまったお陰で、地球は我々の住めない星になってしまいました」


                                   了

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