第7話 心配と嘘
病室には外から鍵をかけていた。
だから大丈夫だと、病み上がりだからと、逃げられるはずはないと思っていたのが間違いだったー
診察室に着くと孤宮は
「で、どうしたぁ?」
無精髭を触りながら京乃を前にしてもニヤニヤと笑っていた。
「話と違うだろうが…殺されてぇか?」
京乃は二人になるとまるで人が変わり狐宮の胸ぐらを掴んだ。
今にも殴りそうな勢いだったが変わらず狐宮は笑い続けていた。
「
「…なら近付かず診察しろ」
「それは無理なお願いだねぇ」
少しの沈黙が流れると京乃は胸ぐらを掴む手をパッ離すとソファーにドサッと座った。
「千影は退院できるか」
その言葉に狐宮は服を払い
彼の正面のソファーに座った。
「本人次第だねぇ…
「俺はなんともねぇよ」
バタンッッ!!
診察室に血相を変えて入って来たのは木々島だった。
「く‥組長!!ハァ、千影様の記憶がありません!!」
京乃は目を見開いてチラッと狐宮を見た。
狐宮は吹き出して口を押さえながらクククと笑っていた。
「クク…一杯食わされたなぁ」
狐宮の言葉を最後まで聞く前に診察室から走っていた。
やっと手に入れたはずだった
千影を手に入れる為にどんなことでも…
「千影…千影!?」
京乃は病室に入ると千影の姿がどこにもなかった。
窓が空き、カーテンが風に舞っていた。
窓から下を覗いた
この高さから落ちたら無事ではない。
「どこに行った…」
怒りと不安が交差して震える声で呟くと
ーバリィィィン!!
大きな音が病室の外にまで響き
やり場のない怒りをぶつけた。
ーーー
どうしても唐紅家に戻りたかった。
そこにどんな結果があっても
少しだけ、少しだけと帰りたかった。
「ハァハァ…」
千影は走る足を止めて荒い息を整えた。
「ここ…どこだろう」
すれ違う人々が千影をチラチラと見た。
ピンクの患者着に裸足の姿はさぞ珍しいものなのだろうと思っていた。
しかし人々が気になっていたのはそこではなかった
銀色に輝く地面につきそうなほどの長い髪に赤い目はどこの国の人とも思えない異様な容姿だった。
千影からすれば色々な服装と髪型、数え切れないほどの人々がこちらを見てくることに恐怖を感じていたがそれよりも
しなければいけないことがあった。
「行かなければ…義兄様…」
千影は疲れと息切れで震える足を踏ん張ってどこかも分からないまま
ただ走った。
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