第5話 あの世か現実か
四角い部屋にいた。
その先は一本道しかない。
「…ここは?」
ここは何処なのか分からない
自分が誰なのかも
立ち上がり選択ができない道を1歩ずつ歩いた。
先が見えない、どこまで続くか分からない道。
何故か不安な気持ちはなかった。
ー 千影 ー
「そうだ…私は千影だった。」
頭に響く聞き覚えのある声は忘れていた自分の名前を思い出させた。
ー ねえ ー
次は来た道からうめき声が聞こえた。
聞き覚えのある声が後ろからすると手を引かれ足が止まった。
ー いかないで ー
振り向くと彼がいた。
「きょう…の?…」
幼い頃の京乃…出会った頃の…
そうだ、私は死んだんだ。
ー大丈夫ー
ハッとした千影は幼い京乃を抱き上げて来た道を戻り始めた。
「…ありがとう…京乃」
元の部屋に戻るともう1つの道が現れていた。
不安な気持ちは変わらずない…。
進見続けることで
新しい道を走ったー
ーーー
「千…千影様!?」
目が覚めると千影にとって見知らぬ眼鏡をかけた男性が居てかなり慌てている様子だった。
「だ…だれ…ゴホッゴホッ」
千影にチューブが刺さっており上手く喋ることが出来なくて咽せ返っていると
彼は走ってどこかへ行ってしまった。
「こ…ここは…ゴホッ…」
白い部屋と白いベッドにバイタルサインモニターがある事で病院であることを理解した。
「ぐッゴホッゴホッ…」
繋がるチューブを引き抜き
起き上がることに何ら問題はなかった。床に足を着きゆっくりと立ち上がり
裸足のままペタペタと小さい音を立てながら窓から外を見た。高層階のようだ。
そこで初めて高い場所から景色を見た。
「綺麗…」
バンッと大きな音を立ててドアが開いた。
千影は振り返りその人物の顔を見るとふわっと笑った。
「なんて顔してるんだ」
京乃があまりにもな表情をしていた為千影はつい声に出してしまった。
「千影さん!!」
彼は走り寄り千影を強く抱きしめた。
「気分は悪くありませんか?痛いところはありませんか?」
まるで大怪我をしたかのような態度を向けられ眉をひそめた。
「特にどこも痛くはないが?」
仏頂面で京乃を見つめながら首を軽く傾げた。
京乃は床に落ちているある物を見つけた。
千影に付けられていた酸素チューブが勝手に引き抜いたことが分かったが咎める気はなかった。
「体調が悪くないなら良かったです」
千影の体を優しく抱き上げてベッドに横にさせると頭を撫でた。
コンコンッー
病室の扉から2回ノックされる音が聞こえた。
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