第2話 10年後君と再開する
本の世界で知った外の世界。
草木は青い匂いがして海はしょっぱい。
私くらいの歳の人間は高校へ通っているらしい…まあ私には関係ないが。
「…本当、私には関係ない空想の世界だな」
クスッと鼻で笑うと白い牡丹が特徴の黒の着物に着替えた。
昨日の出来事を思い出させるように切れた口の中がズキっとしたが、暴行される度に毎回されている丁寧な処置に傷跡も残らず痛みが残ることもほとんどない。
長い廊下を歩き、お客様用応対室の障子前に正座した。
「義兄様お呼びでしょうか…」
千影は丁寧に頭を下げながら障子を開いた。
「ああ、来たか…妹の
しかし千影は使用人と戌夜以外の人と面識はない。
あるとすれば唐紅家から脱走したあの日の人物。
「初めてお目にかかります…
まるで初めて千影と会うかのように丁寧な挨拶をした彼の印象は人当たりが良い好青年。
「…唐紅 千影だ、初めまして。」
左京の言い方的に覚えていないことを理解した千影は初めて会うと偽ることにした。
「京乃、すまないが先程言った通り私は用があって席を外す…千影、彼は友人だが客人だ粗相のないように」
戌夜は腕時計を確認しながら部屋から出て行った。
何も聞かされていなかった千影は部屋に残されて2人きりになっても特に自分から話しかけることはなかった。
そんな空気の中彼は彼女へ近付くと目の前に跪いた。
「触っても宜しいでしょうか?…」
彼が真剣に見つめていることと言葉に首を傾げた。
「構わないが…」(再度挨拶したいのか?)
不思議に思いながらも手を差し出すと
京乃は差し出された手を掴み引き寄せた。
暖かい彼の体温を布越しに感じたことで何が起こっているのかやっと理解できた。
千景は優しく京乃に抱き寄せられていた。
「なッ…触るって……」
あの日に出会った時はもっと幼くて、面影はあるが雰囲気も別人のようにも感じた。
京乃を引き離そうと手に力を入れようとしたがそれをやめた。
「まぁ…許可してしまったものは仕方ないな、」
ー
30分後
「…僕と気付いて下さっていたんですね…嬉しいです…こんな話し彼の前では出来ませんから…」
ふふっと笑いかけながら愛おしいそうな表情で千影の頭を撫で続けていた。
「いや…流石に長いな…」
30分もの間抱き寄せられ、その後も左京が隣に座ったまま離れようとしないことに嫌気がさしてしまいそうな状況ではあったが唐紅家の人間意外と関わることがない千影は心の中では満更でもなかった。
「その…大雨の日に出会ってそれ以来だな、義兄とはどうやって知り合ったんだ?」
「大学の友人で…弁護士になる為に通っています」
「大学?弁護士…?」
千影はその名前に驚きを隠せず目を見開いた。
学生とは小説で覚えた知識であり1度も通ったことも実物を見た事もない為、幻のような存在のように思っていた。
同時に戌夜が大学に通っていることも初めて知り複雑な心境にもなった。
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