最終話:私、生田様のこと好きです。

なわけで、屍鬼麻呂しきまろは蘆屋道満にとっ捕まって、俺たちのすることは

なくなった。

めでたく事件解決・・・。


ってことは俺は約束通り吹雪ちゃんの彼氏でいいんだよな。


「ダメです」


「まだ何も言ってないじゃん・・・」


「セックスさせろって言うんでしょ?」


「そんなはしたないことは言わないよ・・・俺の彼女になってってことだよ」

「屍鬼麻呂の件は解決しただろ?」


「吹雪ちゃんが言ったことを反復するとだな・・・」


《分かりました》

《お約束します、もし無事に屍鬼麻呂しきまろを捕らえることに成功した

暁には私、生田様と正式にお付き合いして差し上げます》


「以上・・・そう言ったんだからね」


「まだ、その跡がありますよ生田様・・・」


《まじで?ってことはどう言うことかわかってる?》


《生田様は、私とハグしてチューして、それからセックスしたいって思ってる

のでしょ?》


《察しがいいな〜吹雪ちゃん・・・それがそもそもの俺のひとつの目標

ですから・・・》


《でもダメです・・・お付き合いはして差し上げますけど、セックスはダメ》


《彼女になるってことは恋人になるってことで、恋人同士ってのはエッチ

するでしょ、ごく自然に・・・》


《ダメですよ・・・》


「ここまでですよ生田様」


「それに屍鬼麻呂は私たちが捕まえたわけじゃありません」

「約束とは違った結果になりましたよ・・・」


「そんな細かいこといいじゃない・・・事件はめでたく解決したんだから」

「それに俺たち一緒に行動したんだから吹雪ちゃんだって俺に情が湧いてるでしょ?」


「俺がいなくなったら寂しいよ・・・俺吹雪ちゃんを笑わせる自信あるし

・・・絶対悲しませたりしないよ」

「いつも、ふざけてるけど・・・その気持ちは本当だよ、大切にするから・・・

何があっても一生大切にする・・・だから」


「待ってください・・・怪しいですよ生田様」

「一生大切にするなんて・・・それって告白じゃなくプロポーズになって

ません?・・・」


「ダメでしょうか?」


「ダメですよ・・・私だって心の準備ができてないですし・・・ダメです」


「そうか・・・俺はドジだけど俺なりに頑張ったつもりだったんだけど・・・

それは吹雪ちゃんには伝わってなかったんだね」


「分かった・・・俺は俺の時代に帰るよ」

「吹雪ちゃんと一緒にいられて楽しかったし幸せでした」

「ありがとう」

「どうかお元気で・・・でも生田 性也って男がいたことは忘れないで

くださいね・・・」


「それじゃ・・・」


「・・・・・・ん?」


「吹雪ちゃん・・・なにしてるんですか?」


吹雪ちゃんは俺の服の袖を掴んで、俺を見上げていた。


「あの違うんです・・・」


「なにが違うんですか?」


「私だって心の準備が・・・って言いましたけど、できてるんです」

「屍鬼麻呂を追ってる時から・・・ほんとは私の心は決まってました」


「だから帰らないでください・・・帰らないで、生田様・・・」


「・・・・だってダメなんでしょ?、別にエッチどうのこうのじゃ

なくて・・・吹雪ちゃんにその気がないなら、俺の片想いじゃ

ないですか」

「それじゃ〜吹雪ちゃんから、フラてたのと同じです」


「そりゃ俺だった彼女が欲しいですけど、片想いなんて、いつその想いが

届くのかも分かんないなんて、そんな惨めな思いはしたくないです」


「そんな思いさせません」

「好きなんです・・・私、生田様のこと好きです」

「だから帰らないで・・・いいえ、私が生田様の時代についていきます」


「いいですよね、晴明様・・・私を生田様と行かせてください」


「吹雪ちゃん・・・」


「好きにするがよいわ・・・」

「式神と人間の取り合わせとは・・・これまた酔狂なことよのう」

「さもあらん、世は酔狂で成り立っておるわ・・・めでたし、めでたしじゃ」


俺は吹雪ちゃんを強く抱きしめた。


「さあ、一緒に帰ろう貞操観念がめっちゃ高い式神様・・・」


「生田様にだけはめちゃ低いです」


おしまい。



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式神さんは意外に貞操観念が高い。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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