第3話:私、式神ですけど。

主人あるじ?・・・主人って?」


安倍晴明あべのせいめいです」

「私と一緒に行ってみますか?平安時代に・・・生田様?」


「安倍晴明?・・・って陰陽師の?」


「そうですよ、ご存知?生田様」


「そりゃ映画化もされてるし超有名な人ですからね」

「つうか桜さん・・・その安倍晴明さんが主人あるじさんなんですか?」


「そうですよ・・・生田様、式神ってご存知?」


「よくは知りませんけど・・・陰陽師の助手みたいな人?」


「助手って言いますか、陰陽師の命令で自在に動く霊的存在のことです」

和紙で出来た札に陰陽師が術をかけると陰陽師が描いた姿に形を変えるんです」

「私はもうこの姿で固定されていますから他のキャラに変わることはありません」


「はあ・・・式神・・・吹雪さん和紙でできてるんですか?」

「でもちゃんとハグできるんですよね・・・エッチもできるんでしょ?」

「そこ大事なんです」


「エッチって・・・セックスって言うほうがよくありません?」


「じゃ〜俺はエッチで、吹雪ちゃんはセックスで・・・」


「統一したほうがよろしいんじゃないですか?」


「いいんですって、エッチでもセックスでもそんな細かいことは」

「どっちだって意味は同じなんだから・・・」


「まあ、よろしいですけど・・・」


「この姿は言って見れば晴明様の好みの女、タイプってことでしょうから」


「あ、それなら俺もタイプです・・・桜さんは俺のタイプなんです」

「安倍晴明さんと気が合うかも・・・つうか晴明さんいいセンスしてますね」


「は?」


「実は俺、桜さんに・・・吹雪さんに別の話があって来たんです・・・」


「え?・・・平安時代に行きたいってお話は?」


「あの、平安時代に行きたいってのはただのフェイクです」


「フェイク?・・・フェイクって申しますと?」

「平安時代に行きたいってお話は?メインではないのですか?」


「はい、すいません違います」

「引かないで聞いて欲しいんですけど・・・俺、この前、桜さんとお会いした

時から、恋の花が咲いたんです・・・今、絶賛満開中です」

「桜さん、いや吹雪さんのことが好きになっちゃったんです」


「エッチしたいんです」


「セックスでしょ?」


「はい、セックスです」

「って、違いますって・・・そうじゃなくてよかったら、まずは付き合って

欲しいと思って?」

「あの、そう言うお願いはダメでしょうか?」


「・・・メインな話ってそれですか?」

「私、式神ですけど・・・」


「でも大学中の男どもが桜さんに群がって来てるって話じゃないですか?」

「そんなあわよくばって思ってるやつらと違って俺は真剣です」

「めっちゃドキドキして自分の気持ちを告白しようかやめようか散々悩んだんです」

「この切実な気持ち分かりますか?」


「分かりません・・・」

「私に言い寄ってくる殿方はどなたであろうとみなさんお断りしてるんです」


「え〜そんなあ」

「そこを百歩譲ってなんとか俺に振り向いてくれませんか?・・・人助けだと

思って」


「人助けって・・・私、ボランティア活動はしてませんけど・・・」


「でも、俺の世界に桜さんがいないなんても考えられないんです」

「もう桜さんが・・・いいえ吹雪ちゃんがいないと俺は生きていけません」

「どうか僕の彼女になってください、一生のお願い!!」


「まあ、大袈裟な殿方・・・」


「そう言うことはわたくし一人では決められませんの」

「晴明様にお伺いを立ててみませんと・・・」


「ぜひ、お伺い立ててください」


「それが・・・今、晴明様は・・・」

「すいません生田様、実を言いますと私は今、生田様と逢瀬を重ねてる場合

ではないのです」


つづく。


※普通ならば、平安時代の人はセックスのことを「逢う」って表現するらしい

ですが吹雪が「逢う」なんて言ってもピンと来ません。

営みとか交わり、まぐわいって言い方もありますけど、これはもうストレートに

セックスでよいではないかと・・・。

この小説、常識にはこだわってないので・・・。



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