第9話
だが、その時間も長くは続かなかった。
『プラチナ枡席』に配置された全ての機関砲が一斉に火を吹き、
機関砲を撃ったのは、色々な国から来た二人の欲望の犠牲となった児童たちの遺族だった。
彼らは二人が試合をする事を知るな否やクラウドファンディングで『プラチナ枡席』の機関砲の近くの席を買い占める資金を募り、ストレッチゴールを数回設けるレベルの金額を集め晴れて本日復讐を果たしたのだ。
通常の格闘技興行なら、捜査機関の介入などで確実に以後の試合が無くなるところだが、ここは観客絶対主義の闇相撲のフィールドだ。
俺達のみならずNDWFのレスラー達も試合前に書面にて同意し、望んでこの現代のコロッセウムでの殺し合いに参加しているのだ。
「娘の仇だ!」
「Kill Punks...Motherfucker!」
かつての己の欲望の代償を鉛玉で一身に受け止めた二人はやがて、穴だらけで血塗れの肉片と成り果てた。
それを見届け『プラチナ枡席』から引き上げる数十人の遺族達に、他の観客からまばらに拍手が送られる。
決まり手は両者死亡かつ遺族達による機関砲掃射でリングが破壊された事を踏まえ、『仇討ち(無効試合)』となった。
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リング修復と機関砲への銃弾装填の為、インターバルの時間が設けられた。
「闇相撲…なかなかにスリリングじゃないか」
選手用の喫煙所でタバコを吸っていると、チャールズに声をかけられた。
「そちらの選手を二人も潰しちゃって、なんか悪いね」
俺は皮肉混じりに返す。
「なあに、一つの興行で二人死ぬのはNDWF基準では少ない方…それに、その程度の損失で闇相撲の奥深さを体感できるなら安いモンさ」
チャールズはそう言うとVapeを吸って、濃い煙を吐き出した。
「それに、今頃ドロシーとジョニーの追悼グッズがNDWFのオフィスでデザインされている。Tシャツにマグカップ、スマートフォンケース辺りが売れ筋だ。早ければ明後日には予約販売が始まるはず…おっと、電話が入った。失礼するよ」
チャールズはそう言ってスマホを取り出し、喫煙所を後にした。
そういえばチャールズはNDWFではどういう立ち位置なのだろうか?
俺は思案しつつ2本目のタバコに火を点け、煙を吸い込んだ。
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1時間半後。
リングの修復が完了し、試合再開となった。
次は
果たしてどんな取り組みになるのだろうか?
俺は期待に胸を躍らせた。
闇相撲 芥子川(けしかわ) @djsouchou
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