第7話

確かあの機関砲…携行には難があるが取り外しが可能な機種だったはずだ。


俺は『プラチナ枡席』で瓶ビールを呑みながらブチ上がってる格闘技観戦が好きそうな中年男にジェスチャーで機関砲をリングに落として貰うよう伝えた。

それに気づいた中年男は笑顔とリムアップでそれに応え、そこそこ重い機関砲を俺の近くのマットに落としてくれた。


それを見たテッドの表情が青ざめる。

やっぱりな。

ニューナンブやトカレフの銃弾は防げても、機関砲は無理らしい。


俺は機関砲を持ち上げると、躊躇う事なくテッドに向けて狙いを定め発砲した。

悲鳴を上げる事なくリング上で肉片と化すテッド。

まずは俺達の一勝…決まり手は『機関砲掃射』ってところか。

とはいえ、早くもNDWFの洗礼を浴びた一戦であった…。


ふと、解説席に目をやるとチャールズがニヤニヤしながら俺を見ているのに気付いた。

紳士ぶってても所詮はNDWFの異常レスラーって事か…クソが。


---


第2試合。

嫁殴よめなぐりの番だ。

女性ファンを殴り付けたであろうその拳は、早くも血に塗れていた。


魔鬼雨まきう関に拾ってもらった大恩は忘れませんよ…この試合に勝ったら、接見禁止命令上等で嫁を殴るために何としてもよりを戻します」


爽やかな笑顔でそうのたまい、殊勝な死亡フラグか?と思ったが、どうやらこの男、自身の手で嫁を殴るほど愛しているらしい。

その為に、嫁殴よめなぐりの絶対的な敗北(つまり、死亡)を期待してテレビ中継を見ているであろう別居中の嫁に見せつける為に、絶対に勝ちたいそうだ。


そんな嫁殴よめなぐりの対戦相手はNDWF唯一の女子レスラー『ドロシー・パイク』。


女子レスラーとしても有名だが、『ミサンドリストの女王』を公言する著名インフルエンサーでもあり、全男性への憎悪を記した著書『Male Extinction - Why the male sex must be DESTROYED from this world』は全世界で翻訳され数千万部も売れているらしい。


彼女のInstagramアカウントを一度見たが、

「The other day, I dealt with a fuckin' male who picked me up at a bar by feeding him to my dog🐶(先日、バーでナンパして来たクソオスを殺して飼い犬の餌にした🐶)」

「A world like Shozo Numa's "Yapoo, the Human Cattle" is a misandrist's utopia🌈🌈🌈(沼正三ぬま しょうぞうの"家畜人ヤプー"の様な世界こそミサンドリストとしての理想郷🌈🌈🌈)」などと云う様な投稿だらけで、心から男性性を憎悪している気持ちが伝わって来た。

(作者の沼正三はおそらく男性なのだが…)

そして、それはNDWF加入後から加速しているらしい…。


相手がそんな女性であると分かった瞬間、柔和だった嫁殴よめなぐりの表情が一変した。

「オオォ…女は殴ル…殴って言う事を利かせル…」

なるほど、やはり四股名しこなが示す通りの重篤なミソジニストだったのか。


これはますます期待できるな。

俺は嫁殴よめなぐりの勝利を確信した。

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