第4話
俺はこの事をスポーツ新聞で知った。
スポーツ新聞は何時だって正しい情報しか載せない。
そして……闇相撲が世間でメジャーになっていく中で、一部の人間達がこんな声を上げ始めた。
『闇相撲とプロレスの試合があったら面白いのに』
そして、遂にその夢が叶う日が来たのだ。
相手は、ありとあらゆる薬物で寿命や人格崩壊と引き換えに超人的な筋力や躯体を手に入れた化け物揃いだ。
それに対して闇相撲側も連中に引けを取らない『
必然的に、そこに俺も加わる事になるだろう。
これはもう相撲と言うより、闇の格闘技と言った方が正確だろう。
あるオフの日の事。
街を歩いていたら、目付きの怪しい身長2m弱の外国人を目撃した。
どう見てもNDWFの関係者だろう。
噂によると薬物投与で人格が破壊されている選手が多いらしく、またそうでない選手も若くして亡くなるとの事だ。
要するに、強くなる為に命を惜しまないヤバい連中ってことだ。
俺はなるべく関わりたくないので、見なかった事にして通り過ぎようとしたその時、不意に声を掛けられた。
「Hey! Do you have a ticket?(おい、チケット持ってるか?)」しまった、日本語は通じないようだ。
幸い俺は英語が出来るので、英語で返答した。
「No. I'm not into it.(持っていません...)」
すると、外国人は俺の胸ぐらを掴み、耳元で囁くように言った。
「I couldn't figure out how to buy tickets to Yami-Sumo... I turned toward the smell of pomade and saw you, so I asked you a question. You are a wrestler of Yami-Sumo, right?(闇相撲のチケットを手に入れる方法がわからなくてな。鬢付け油の匂いを頼りにお前を見つけた。だからこうして訊ねてるんだよ。お前は闇相撲の力士だよな?)」
やはりそうだったか。
敵情視察とは関心なこった。
だが、こんなところで騒ぎを起こしたら面倒なので、俺は穏便に返すことにした。
「Yes, I am. But please do tell me your name?(えぇ、そうです。でもあなたの名前は?)」
俺の言葉を聞いた外国人選手はニヤリと笑い、日本語でこう答えた。
「私の名前は『チャールズ・ドッジ』。UCLA卒で卒業論文に日本に関する論文を提出する程度には日本語には堪能だ。よろしく」
(なるほど、この人なら話が通じるかもな…てか、最初から日本語で話せよ)
そう思った俺は、改めて彼にNDWFについて尋ねることにした。
「こちらこそよろしくお願いします。それで…単刀直入に聞きますが、あなたの所属している団体…つまりNDWFの事ですが、そちらの団体は今何をしようとしているんです?」
チャールズは少し考え、答えた。
「それは勿論、日本の裏国技である闇相撲を研究し、NDWFの進化と発展に貢献する為だ。かつて新日本プロレスがアメリカンプロレスに多大な影響を与えたのは君も知っているだろう? それの再現をしたいのだよ」
なるほど、そういうことだったのか。俺は納得した。
その後、チャールズにサポートセンターの電話番号を教え、別れた。
しかし、本当に油断ならない奴だったな。
これからはもっと気を引き締めていこうと思ったのであった。
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