第2話
ところで相撲に多少なりとも明るいなら『八百長』の懸念を覚える人もいるかと思う。
風の噂では、(一応違法ではあるが)闇相撲を賭けの対象にしている連中もいると聞いている。
が、その心配は無用だ。
各人が共謀して八百長する位なら、対戦相手の力士をいの一番に殺した方が昇進も早まりお得だからだ。
ちなみに俺は今年の春場所から関取に向けて取り組み中なので、勝ち越せば短期間で昇進という大一番の最中である。
そんな折、取組み前に親方にバックヤードに呼び出された。
何か前に塩っぱい取り組みでもしただろうか?
親方が入る前の闇相撲業界は、素行不良で一般の相撲業界から追い出された連中の溜まり場で、二日酔いの状態での弛緩しきった取り組みや、八百長など力士間の馴れ合いが横行していたのだという。
それを、わずか数年で全力士の意識改革を図り、今では老若男女が安心して緊張感溢れる取り組みを楽しめる興行にまで成長。
俺もそんな尊敬する親方の様な、素晴らしい闇相撲力士を目指してるって訳だ。
バックヤードに着くと親方がいつになく真剣な眼差しを俺に向け、
「
と、言った。
先にも挙げた様に、闇相撲の枡席からは投石や鈍器、トカレフなどの銃火器が投げ込まれるのが常だが、親方曰くそれに加え機関砲が配備されるという…。
例の『プラチナ枡席』をチラ見した所、明らかに軍用であろう小型の機関砲が数台鎮座していた。
あんなモンで撃ち抜かれたら力士生命はおしまいだな…。
いつも以上に親方の目力が強いのもそのせいか。
そんなことを考えるうちに前頭から取り組みが始まり、いよいよ俺の番となった。
おどろおどろしい入場テーマ曲(有名なブラックメタルバンドの曲らしい)と共に土俵へ上がり正面を見据える。
目の前にいたのは…『
確かこの前まで平幕だったはずでは?
「よう!
実際、俺は思ってるけど。
でも、コイツの四股名もなかなかだぞ。
まさか、自分の名前を漢字で書けないとは思わなかったし。
ただ、ここで挑発に乗っても仕方ないので、俺は素直に返事をすることにした。
「ああ、丁度そう思ってたところさ」
それを聞いた
「実はな……俺もお前と同じで、この春場所での昇進を狙ってんだよ。だから今日は……負けねぇぜ?」
その言葉と同時に行事が軍配を返し、俺は
闇相撲の取り組みの始まりだ。
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