第2話 長宗我部家

俺が生まれたのは戦国大名長宗我部元親の長男千雄丸としてだ。長宗我部家は土佐(現高知県)の一部を治める大名である。父の元親は鬼若子と呼ばれる猛将だ。そしてその長男である俺は周囲から期待が寄せられる。

「千雄丸様、稽古の時間ですぞ。」

俺の稽古役を務める家臣の声がする。

「あぁ分かった。」

そう言って俺は稽古場へと歩みを進める。ここ岡豊城は長宗我部家が主城とする城で、その一角に存在するのが俺の稽古場だ。

「ヤァ!」

俺は思いっきり家臣めがけて木刀を振るう。

「甘いですぞ。」

パァン、俺の木刀が手から離れる。

「千雄丸様今のは踏み込みが甘うございました。」

「そうか助言感謝する。」

俺は少し硬めの言葉を選んで接する。それは次期当主としての風格を身につけるための訓練と父の側近の谷忠澄に教わったからだ。

「ヤァ!」

俺は先ほどより強く踏み込む。

「それでは動きが読まれますぞ。」

俺の木刀は先ほどと同じように宙に舞う。

俺には運動センスは全くない。前世では一度も走ったことはないしほとんどベットの上での生活だったからだ。だが毎日着実に成長していることを感じる。それもそのはず、俺には猛将長宗我部元親の血が流れているからだ。それに体を動かすことに楽しさを見出しているから稽古が苦にならない。そんなこんなで平和な日々は過ぎていく。

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