学院編〈4〉(エレノア視点)
「ですのでここの公式にはこの数字を当てはめることでこの円周の数が求められるようになります。このように当てはめる数字と・・・」
お母様が目の前で私達に授業をしている様を見て、とても似合っているなと思った。
学生時代から憧れていた教師を一時的にとはいえやれること嬉しいらしく生き生きとしていた。
他の皆もお母様の授業を真剣に聞いている。
まあ、ほとんどの人は目の前で国のトップの教皇様が授業をしていることに驚きと緊張があるようであまり授業に集中できていないように見える。
ただ、一部の人達は憧れや尊敬の眼差しでお母様の授業で得られる知恵を自分の物にしようと努力している。
特に一際集中力が増すのは魔法の授業だ。
世界一強いと言われているお母様の授業だからこそそこから得られる知恵は貴重なため授業に集中できていない人達も皆一様にこの授業にはより一層、熱が入る。
本当に凄いな〜、と改めてお母様の凄さを実感した。
今日の授業が終わり、セシルと寮への帰り道を歩いていると前から声が聞こえた。
「あらエレノアさんとセシルさんではありませんか。」
「マーラさん、お久しぶりです。」
彼女の名前はマーラ・ヴェルニディア
セシルと同じく公爵家の令嬢で成人しており、性格は優しく、抱擁力があり、普通の令嬢はしない家事もできる完璧美人なのだが、魔法の研究ばかりやっているせいで婚約者がろくにできず、行き遅れになっている残念な人だ。
そして、この学院の教師でもある。
「エレノアさんとセシルさんはこれから寮に戻るのかしら?」
「はい、セシルと下街の方に最近できたスイーツの店にでも行こうと思いまして。」
「そう・・・、あのね実は二人に頼みたい事があって、時間がある時に手伝ってほしいの、お願いできないかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。ね、セシル。」
「はい、私はエレノアさんとほとんど一緒にいますので特にこれといった用事はありません。」
「ありがとう、じゃあ時間が空いたら私の研究室に来てね。」
「分かりました。」
2日後、私達はマーラさんの研究室に来た。
扉をノックし、開ける。
「失礼します。マーラさんいらっしゃいますか?」
部屋に入ると紙の束がびっしりと積まれ、異色に染まった毒に見える液体があちこちに置いてある汚部屋が目に入った。
そして、その中に一人の女性マーラさんが居た。
「あ、来てくれたんだね。ありがとう。」
「いえいえ、大したことではありませんので。それで、私達に頼みたいこととは何でしょうか?」
「実は貴方達にこの水晶に触れてほしいの。」
マーラさんはそう言って懐から透明な水晶を取り出した。
「はぁ、それだけですか?」
「えぇ、実はコレ、魔力供給装置を改良した物でね。コレを使えば、もし自分の魔力がなくなった時に自動的に補充できるようにする仕組みを持ってるの。」
「凄いではないですか!、自分の魔力がなくなったら自動で補充できるようになるなんて。周囲の魔素を自分の魔力に変換する方法は私でもできないのでコレがあれば楽になりますよ。」
「えぇ、だから先ず魔力を注ぎたいんだけど私の魔力量じゃコレの魔力が満タンにならなくて、実験ができないのよ。」
「なるほど、つまり私達はコレに魔力を込めればいいのですね。」
「そうよ。お願いできないかしら?」
「分かりました。セシルもこっち来て。」
「はい。」
そして、私達二人は水晶に手をかざした。
「っな!?」
「っ!」
すると、魔力が一気に持っていかれ、酷い倦怠感と眠気に襲われた私の視界が暗くなった。
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