学院編〈2〉(エレノア視点)
「・・・・・ですので皆さんには良い成績を収めてほしいと思っています。将来の自分を思い浮かべ、学友と切磋琢磨することで夢に近づけるのではないかと私は思います。ですが・・・・・」
私は今、学院の入学式でお母様の演説を聞いています。
お母様の演説は私達にとって為になる話で、今の時間は私達新入生にとって、とても有意義な時間でしょう。
なんせ、国のトップであられるお母様の言葉なのですから。
それにしても、お母様は凄いです。何故かその言葉を聞いただけで頭の中に直接入ってきて、忘れられなくなります。
今ではもう、お母様と子どもの頃のようなやり取りはできませんが、それでも甘えたくなる時があり、その衝動をなんとか抑えて、次期教皇として日々努力しています。
ちなみに、衝動の抑え方ですがお母様の等身大サイズのぬいぐるみを自分で作って抱きしめたり、バレずにお母様の寝室でお母様の匂いを嗅いだりして抑えています。
そして、お母様の演説も終わり、入学式も終わった今、私達新入生は自分のクラスを確認して移動しています。
学院のクラスは剣術科、魔法科、商業科、そしてそれらを纏めた総合科があります。
私は次期教皇ということもありますので自然と総合科クラスに移動しています。
総合科クラスに着くと先に居た他の人達の話し声が聞こえます。
そこに私が入るとその人達が一斉に静まり、皆私に視線を向けてきます。
私は視線の圧に躊躇いもなく、窓側の一番後ろの席に腰を下ろした。
すると、一人の少女が近づいて来た。
「お初にお目にかかります御子様。私の名前はセシル・バーミリオンと申します。これからよろしくお願いいたします。」
そう言って頭を下げてきた少女の家名に覚えがあった。
「貴方、バーミリオンということはアリシア宰相殿の御息女だったのね。」
「はい。」
そして、目の前の娘、セシルをよく見ると綺麗な紺青色の髪に夜空のような瞳を持った美しい娘だった。
「アリシア宰相殿からよくお話を聞かせてもらっているわ。私としても貴方といい関係を繋ぎたいから今後ともよろしくね。」
「はい。お願いいたします御子様。」
できる事ならこの娘と友達になりたいわね。
「貴方のことセシルって呼んでいいかしら?できる事なら私の事はエレノアって呼んでほしいのだけど・・・」
「呼び方はご自由に、ですがそのように呼ばさせてもらうのは・・・」
「良いのよ。私がそうして欲しいの。」
そして、考えるセシルを待ち、しばらくすると決心がついたのか考えを止めたセシルがこちらに向いた。
「分かりました。ではエレノア様とお呼びさせていただきます。」
「うーん、私、貴方と友達になりたいし、将来は一緒に教皇と宰相という立場で国を運営したいからできる事なら呼び捨てにしてほしいのだけど・・・」
「ダメです!」
その後、「でも・・・」「ダメです!」の論争が勃発したが最後にはセシルの方が折れて、「呼び捨ては無理ですがエレノアさんとお呼びするならば・・・」というかんじに修まった。
担任からの学院についての説明も終わり周りの人達は次々と教室を出ていく。
そんな中、セシルだけがこちらにやって来た。
「エレノアさん、一緒に馬車まで帰りませんか?」
「ええ!一緒に行きましょう。」
折角の初めて出来た友達からのお誘いだ。嬉しくて仕方ない私は馬車に着くまでセシルとたくさんお喋りをした。
馬車に着くとお母様が中に居ると御者から聞いたのでお母様を呼びセシルを紹介した。
その時にセシルを次期宰相として一緒に国を運営したいと言ったらお母様は快く許可してくれたので嬉しかった。
二週間後
私はセシルと一緒に寮から学院の校舎まで歩いているとある話が聞こえた。
「なぁ、昨日魔術科の人がまた行方不明になったって知ってる?」
「まじか、これで6人目だぞ。そいつらどうなってるんだ。」
「さあ、分からん。」
「ヤバいな」という言葉を終わりに二人の男子が私達を通り過ぎる。
(魔術科の生徒が行方不明になっている?どうしてなのかしら?)
「先程の話、少々気になりますね。」
「ええ、そうね。私達も気をつけましょう。」
そう言って私達は校舎の方に足を向けた。
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