学院編

学院編〈1〉(エミリア視点)

「皆さん、ヴィスタリア聖魔法学院へのご入学、誠におめでとうございます。さて、皆さんはまだ人生の入り口に立っているだけです。人生とはその人自身の生涯であり、未来です。ですので、どうか皆さんにはこの学院で様々なことに挑戦し、自分に合う事や、したい事を見つけるために学院で学んでください。また、この学院では・・・・・」


 今、私はヴィスタリア聖魔法学院の入学式で新入生たちの前で演説をしている。

 そして、その中にはエレノアちゃんも居る。

 私の演説を真剣に聞いているエレノアちゃん、本っっっっっっ当に可愛すぎーーー!!! 愛してるよーーー!!!

 そして、私の演説を終えだ後はプログラムが着々と進み入学式が終わった。

(はぁ~、明日からエレノアちゃんに会えなくなるのか〜、さみしいな〜)と思いながら馬車の中でエレノアちゃんを待った。


「お母様只今戻りました。」


 これから、エレノアちゃんがいない生活をどうやって過ごそうかと考えていると扉が開きエレノアちゃんの声が聞こえた。

 馬車を降りて出迎えた私の目の前ではエレノアちゃんの横に一人の少女がいた。


「おかえりなさいエレノア。 首席合格おめでとう、それで学院はどうだった?」


「ありがとうございます。学院の雰囲気がとても良く、先生たちも生徒のために思える方達で学びの場として最高の環境です。」


「そう、そんなに気に入ったのね、良かったわ。 それで、隣の子は誰かしら?」


「彼女の名前はセシルです。教室が同じで、先程友達になった人です。」


 すると、セシルは淑女の礼をした。


「お初にお目にかかります教皇様。私の名前はセシル・バーミリオンと申します。以降お見知り置きください。」


「はじめましてね、セシルちゃん。貴方の事はお母さんのアリシアからよく聞かせてもらっているわ。今後とも、エレノアと仲良くしてあげてね。」


「もちろんです。教皇様。」


 この娘はこの国の宰相をしているアリシア・バーミリオンの娘だ。

 バーミリオン家は公爵家の家柄で宰相の地位を代々継いでいる。

 その中で、初めて女性で宰相となったアリシアは私の友人でもあり、ママ友としてよく自分の子どもの話をする。

 エミリアとしてこちらに来た当初はパニックでいた所をアリシアがよく助けてくれた事を思い出しているとエレノアちゃんから声がかかった。


「お母様、実は私、教皇の座を継いだらセシルを宰相として一緒に国を運営しようと思います。」


「ええ、別に構わないわ。貴方が決めたことですもの。親としては反対しないわ。」


「ありがとうございます。お母様。」


(そうか、もう決めたか。エレノアちゃんがこんなに早く決断するなんて・・・

 なんだか、寂しいな。本当に子どもの成長は早い。)

 と思いながら私はセシルちゃんとその場で別れ、城に戻った。




 入学式が終わってニ週間が経った今、私は無になっている。


「ーーーーーーー」


 学院は寮生活のため私はエレノアちゃんと会えないことでエレノアちゃん成分が不足して暴走状態に入りかけていた。

 教皇としての仕事にも支障をきたしているため、

 執務室の椅子に座って何処か遠くを見ている私にアリシアが近寄って来た。


「エミリアさん、報告があるんだけど。」


「・・・・・―――――何?」


「じ、実は先程ね、学院内で行方不明事件が起こっていると学院長殿から報告があって、この書類に情報を纏めてるから見てほしい。」


 そして、受け取った書類を見ていると気になる事が書かれていた。


「魔力量が多い子達のほんとんどが行方不明になっていると。コレって誘拐事件じゃ・・・」


(魔力量が多い子っていったらエレノアちゃんやセシルちゃんも入るじゃん! やばい!!!)


「行かないと!」


「待ちなさい」


 勢いよく立ち上がり部屋を飛び出そうとした私はアリシアに襟首を掴まれて強引に席につかされた。


「だって! このままだったらエレノアちゃんやセシルちゃんがいなくなっちゃうかもしれないじゃない!」


「落ち着いてエミリアさん。貴方の立場は教皇という国のトップで、民の主導者です。そんな貴方が私情で動いてしまえば不安に思う者が多く現れます。ですから、どうか落ち着いて。」


「っ!・・・ふぅー・・・ごめんなさい、少し落ち着いたわ。」


「良かったです。」


「それにしても、何故このような事件が起きているのかしら? 何処かの国の仕業?、それとも第三者からの攻撃?、どのみちいなくなった子たちを助けなくてわ。」


「学院に影でも送りましょうか? 影ならば交戦するような場合になっても上手く事を運べる筈です。」


「まあ、影でもいいけど一番は教師として入ったほうが生徒と交流することもできて情報を集めやすいと思うの。」


「確かに、教師だと学院での情報を集めやすいと思いますが誰がするのですか?」


 私は口の端を吊り上げた。


「決まっているじゃない。エレノアちゃんを学院首席で入学させた私がするのよ。」





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