成長編 5歳の時〈中〉(エミリア視点)

「〈探知〉」


 ヴノルード大森林に着いた私は空間魔法の探知を使い、エレノアちゃんの気配を探りながら奥へ進む。


「グㇽララァァァァァ!!!」


「ふん!」


 途中、魔獣と遭遇する時があるけど、そんなのお構いなしに私は出てきた魔獣をペチペチとビンタで叩きながら木々をなぎ倒していた。

(私、〈世界王〉としての力が凄いのもあるけど、野蛮だなぁ~。 魔獣を倒してたら周辺の木々が折れまくって自然破壊しまくってるじゃん!)と思いながら奥に進んでいると誰かの声が聞こえた。


「リリア!」


「きゃあああああ!!!」


 そちらに行くと、学生だろうか? 着ている服がヴィスタリア聖魔法学院の学生服なので学生だろう少年少女が居た。

 が、少女の方は鳥型の魔獣に捕まえられ、空を舞っている。

 少年は少女を助けようと必死に魔獣に魔法を当てようとしている。

 だが、そんなことをしたら少女に魔法がぶつかるかもしれないのに・・・

 今の私はエレノアちゃんの無事を祈りながら一刻も早く探さないといけないため急いでいる。

 だが、目の前で危機的状況に陥っている人達を放って置くわけにはいかない。


(迷っている暇は無い! エレノアちゃんが第一優先だけど、目の前の子達を助ける!)


 私は一瞬で学生を捕まえている鳥型魔獣の足を掴み、学生を脇に抱えて地面に着地した。


「クェ!?」


「っ!?」


「えっ!?」


 目の前に急に現れた私に三者とも驚いていた。

 そして、私は目の前の鳥型魔獣に向けて手をかざした。


「聖なるホーリースピア


 聖なるホーリースピアが鳥型魔獣を飲み込み、私の目の前の大地が抉れてしまった。


「あ〜、やっちゃいましたか」


 そして、大地を直しながら二人の学生を見る。


「っ!ーーー凄い」


「わーーーあ!凄いです!」


 少年の方は驚愕の顔で、少女の方は尊敬の眼差しをこちらに向けていた。


「あなた達は学生ですね。 どうしてこんな所にいるんですか?」


 二人は顔を見合いった後、少女の方が前に出てきた。


「実は学院で今度、魔法のテストがあるのです。でも私、魔法が下手で毎回下から数えた方が早い順位なんです。なので、魔法を上手くなりたくて魔獣と戦えば経験値が手に入るので、それで友達のエギル君と魔獣がいっぱい出るここに来たんです。」


 うん、自殺志願者かな?って思うくらい馬鹿な子だと思った。


「確かに、魔獣と戦うことで経験値が手に入って強くはなります。しかし、自分の力量もわからない方がここに来るのはおかしいですよ。」


「そう・・・ですよね。」


「リリア、あまり落ち込むな。これから自分の力量をわかった上で適切な場所で魔法を上手くなろう。俺も付き合うからさ。」


「うん、ありがとうエギル君。」


 なんだ、この前世で言う所のリア充は、まあ私にはもうエレノアちゃんがいるから別にいいけど・・・


「それでは、私急いでいますので失礼します。 あなた達今みたいに無茶はしないように。」


「はい、お世話になりました。」


「すみません、助かりました。」


 そう言って、私に頭を下げる二人

(なんとまあ、礼儀正しいことで) 

 エレノアちゃん第一の私が他人に対してこんなにも好感情を抱くとは、凄いな。


「これも何かの縁ですし、あなた達に何か困ったことがあったら城まで来て、コレを門番に渡しましたら私に会えます。」


 そう言って、私は懐から金色の装飾された紋章が入っているカードを渡し、その場を去った。

 残った二人は受け取ったカードを見て驚愕した。


「エギル君、この紋章、教皇様のだよね。」


「あ・・・あぁ、そうだな。」


「私達、凄いどころか国のトップの人と話してたなんて・・・話し方、大丈夫だったかな? 不敬罪なんかにならないかな? 今になって不安になってきたよう。」


「大丈夫・・・だと思う。 あんなに優しい人なんだから。」


「そうだよね! 大丈夫だよね! それにしてもなんで教皇様自らこの森に居るんだろう?」


「何か大事な事が起こったんじゃないか? 学院に戻ったらセシリア先生辺りに聞いてみよう。」


「そうだね。」


 そして、二人は学院へ戻って行った。



















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