成長編 赤ちゃんの時(エレノア視点)

「うぅ〜、あぅ〜〜」


「どうしたのエレノアちゃん?」


 私が声を上げると銀髪に金色の瞳がキレイな美しい女の人が近づいて来た。

 エレノア、という名前が私の名前なんだろうと思った。

 そして、私はその女性に抱かれ暖かい温もりを感じ居心地の良さを感じていた。

 多分、この人が私の母親なのだろう。

 私が赤子になっている理由はわからないがとりあえず状況を整理しよう。

 私は元々、日本という国で高校生として暮らしていた。

 名前は九条くじょう 氷華ひょうかという。

 そして、容姿端麗、成績優秀、財閥のお嬢様ということもあって、男子から変な視線を感じたり、女子からは嫉妬の眼差しを受け、時々いじめを受けていた。

 そんな私を気遣ってくれた一人の先生がいた。

 彼女、四ノ山 柚葉は私がいじめを受け、落ち込んでいる時、いつも側に居てくれて、相談に乗ってれたり、元気付けたりしてくれる優しい先生だ。

 だが、先生がある時、職員室で死んでしまったことを聞いて、私は目の前が真っ暗になった。

 そこに追い打ちをかけるようにいじめも増えたことで私は耐えきれず、自殺してしまった。

 そして、気がつくと現在の状況になっていた。

 これからどのような人生を送ろうかと考えていると母親が私を抱いてベランダに近づいた。


「っ! あぅーーー!!!」


「ふふふ、どう綺麗でしょ」


 私がいる場所はどうやらお城の中らしいことに驚きながらも目の前の光景に私は見惚れていた。

 オレンジ色に霞んでいる空を鳥?が飛んでおり、地上にはたくさんの種類の花がオレンジ色の光に照らされ輝いて咲く庭園が、その向こうにはレンガで作られた屋根を持つ家々が、その更に向こうに地平線の先の見えない海に夕陽が溶け込んでいく姿に幻想的で言葉で表されない感情が湧いてくる。

 そして、夕陽が完全に沈んでしまったタイミングでドアのノック音が聞こえた。


「失礼します。教皇様、お食事の用意が整っております。」


「わかりました。」


 そして、母親に抱かれながら移動している私は自分を抱いている人が教皇!だということに驚きつつ、教皇という立場で若すぎない? まだ20代前半に見えるのに、と思っていると食堂についた。

 教皇(母親)に抱かれながら席につき食事をした。


 食事が終わると眠くなってきた私を母(母親だと他人行儀でなんか嫌なのでそう呼ぶ)がベットに連れて行き、私を寝かせた後、机の上にある大量の書類にハンコを押す母の姿を見た瞬間、視界が閉ざされた。






 目が覚めると母が私の上に手を置き隣で寝ていた。

 母から感じる温もりと愛情に居心地の良さを感じ、母の顔に手をつけ、私は眠りについた。







 翌朝、目が覚めると母が私を抱きながら、書類仕事をしていた。

 育児をしながら仕事もできる完璧な人だなと思いながら母の顔に手を触れた。


「っ! どうしたのエレノアちゃん?」


「あぅ〜」


 そして、指を近づけてきたので指を握りながら笑った。


「ふふふ、遊びたいの?」


「うぅ〜」 


 母と遊びながらいつまでも一緒に居られたら良いなと私は思った。










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