第38話 前世で武神と呼ばれた男、オーガ達を掃討する③
砂漠の英雄――アルベルとエルミー。
剣聖――シノギ。
なんだか有名らしい冒険者達が七〇体のオーガへと戦いを挑んでいた。
皆、固唾を飲んで戦いをみていた。
アルバルは交差させた両腕を開きながらスキルを発動させる。
「『
彼の前方から刺々しい砂の塊が飛び出して前方にいるオーガを串刺しにする。砂の貫通力は高く、後方にいるオーガも串刺しにしていた。
「「ガァァアアアアアアアア!」」
刺されたオーガは苦しみ悶えながら暴れるとエルミーが両手を合わせて口を開く。
「『精霊術・
彼女がそう言うと、串刺しになったオーガ達の頭上に巨大な石が降り注ぐ。
オーガ達は断末魔を上げる暇もなく岩の下敷きになってしまっていた。
「「『俊敏大上昇』、『物理攻撃大上昇』!」」
そのあと、二人は身体能力を強化したあと、岩の上へと移動した。
戦い慣れている.。確実にオーガを足止めして止めを刺した点は手堅い。何より、岩を落としたことで後方にいるオーガが進行することを防いだ点を評価したい。
速攻で戦いの後を考えている時点で戦闘経験が豊富と言える。
一方、シノギも順調にオーガを次々と狩っていた。
「『一の太刀・狼』」
シノギは刀を持ったまま回転するとオーガが振るってきた腕を飛ばし、
「『二の太刀、一閃』」
横薙ぎでオーガの胴体を真っ二つにした。
シノギの刀捌きは無駄がなく洗練されたものだ。柔らかい果実を切るように次々とオーガ達を分断していった。
「『六の太刀、竜の舞』!」
そのあと、彼は剣に魔力を込めた後、刀を左右に振りながら前進し、オーガをズタズタに切り裂いていた。
「あいつらと後で戦えないかな」
三人の活躍を見て少し手合わせしたと思っていた自分がいた。
他の皆は三人の戦いに感嘆している様子だった。
「ヒューゴさん! オーガが一体くるのです!」
シェナの慌てた声が聞こえた。
「あ、ほんとだ、『
俺はひょいっと裏拳を宙に食らわす。
すると場は静まり返ってしまう。
「なにしてんだヒューゴ……」
ハッカが呆れ声を出していた。
「まあ、見てろって」
俺は向かってくるオーガを指さす。
「グガッ!?」
「「「!?」」」」
オーガは突然、独りでに殴られたかのように宙に浮き、
――バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
破裂音が四回連続で鳴り、その度にオーガは見えない何かに殴られ続けた。そして、五回目の破裂音がなったときオーガの体は弛緩して地面に落ちていった。
俺が死体となったオーガを見ているとシアドは恐る恐る、話しかけてきた。
「今回は何をしたんですか」
「自然エネルギーを伝ってオーガを殴ったんだ。簡単にいえば最初にかました裏拳で膨大な自然エネルギー何度も放ったわけだ」
「…………そ、そうなんですね」
シアドは首を傾げていた。理解できてない感じっぽいけどまあいいか!
とりあえず、あの三人が打ち漏らしたオーガを適当に駆除しようと思ったそのとき、再び数多の地響きが聞こえてきた。
そのあと、岩の上からエルミーが顔を出す。
「またオーガの大軍がくるわ! 私達三人で持ち堪えるから町に戻って助けを呼んできて! この調子じゃ何体いるか分からない!」
彼女の言葉を聞いてヒルダが行動を起こす。
「皆、ここは引くわ! 依頼料は払うよう父に掛け合いますので安心して――」
「まあまあ、ちょい待て待て」
俺はヒルダの言葉を遮った。
「なんなのよ、今、緊急事態なんですわ」
「俺があのオーガをどうにかするから」
ヒルダの返事を待たずに俺はオーガの群れに向かって歩き始めた。
すると、ファウスやブランカが焦った顔をしていた。
「おい! お前死ににいくつもりか! 命は大事にしろよ!」
「新人冒険者が出ていい場面じゃないわよ!」
怒り半分心配半分の様子だ。
「俺がオーガに勝てないと思ってるのか?」
「当たり前よ」
ブランカはこの人何言ってるの? という顔をしてた。
「その認識を変えてやるよ。例えばだ……目の前に幅が広い川があるとするだろ。その川を泳がずに走って渡るのなんて普通は無理だと思う。なら、俺がその川の上を走ってやるよ!」
「「…………はい?」」
何故かファウスとブランカは困惑していた。
「あ、悪い、俺の幼馴染、頭がちょっとおかしいんだ」
「あ、ああ……そうみたいだな」
「友達は選んだ方がいいわ」
なんか失礼なことを言われてる気がするが気を取り直してオーガの群れに向かって走っていくか!
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