151話 ボツ案

 俺はまたヌゼと例の軍事演習場跡地で模擬戦をして遊んでいた。結婚式を1カ月後に控えている今、色々と準備で忙しいのでこれが独身最後の模擬戦という事になっている。

 2回目の模擬戦の時に出力強化はオフの状態で戦っていたのだが、ヌゼがどうしてもと言うので今は出力強化ありの状態で戦っている。まったく、魔力を補充するメイドたちの身にもなってあげて欲しい、的な事をいうとヌゼはウチのメイドたちにドレスやら装飾品やらを送りつけたらしい。突然侯爵から贈り物など届いたメイドが恐怖に慄いていた。


 ……なるほど、侯爵からプレゼントされると戦々恐々となるのか。だから次期侯爵の俺からパワードスーツゴーレムを押し付けられた時にビクビクしていたのか。うんうん、そうに違いない、決してアーバン君が作った魔道具が怖いとかそんな理由ではなかったのだ。


 そんな事を考えていると馬に乗った騎士がコチラに駆けてくる姿が見えた。

 かなり焦っている様に見える。


 「ネフィス侯爵に火急の伝令!!ナーヘロン領にドラゴンが出現!!対象はスカイドラゴンだと推測されます!!その数3!!」


 騎士は馬に乗ったままそう叫んだ。


 おお、ドラゴン!アースドラゴンの話を聞いた時に搭乗型ゴーレムで戦ってみたいと思ってたんだよね。俺も行って良いかな?駄目かな?


 『スカイドラゴンが3匹だと?!……まて、今ナーヘロン領と言ったか?』


 「は!報告ではナーヘロンの北の端に現れたと」


 『……そうか、そのまま少し待て』


 ヌゼはリストゥエラから降りると騎士の前に立った。騎士も慌てて馬から降りる。

 おや?ヌゼならばリストゥエラで実戦が出来ると喜びながらそのまま駆け出すと思ったのに。


 「それで、騎士たちの動きは?」


 「は!第1から第3騎士団は現在準備を終えて現場に急行中です。また第3騎士団の副隊長殿がコーネリア様にナイトロードで先行するように命令され、コーネリア嬢はその命令に従ったようです」


 「ほう、それで?」


 「は、はい!ヌゼ殿にもリストゥエラでコーネリア様に続いて欲しいとの事です」


 「ふむ、それは誰がだ?」


 「へ?」


 「だから、誰が私にリストゥエラでコーネリアの後を追うように言ったのだ?」


 「か、各騎士団の隊長方からです」


 「なるほど、隊長等が、ね。時に君は何故念話を使わないのだ?」


 「は、は?」


 「此処には軍の関係者ではないアーバン殿がおられる。普通ならば外部の者に聞かれないように念話を使うだろう?直接ここまで来た理由はわかるのだ、リストゥエラが赤い状態だと念話も聞き取りにくいからな。遠距離からの念話だとほぼ完全に遮断されるだろう。だから私が態々降りたのに君は一向に念話に切り替えようとしないのは何故だ?」


 「も、申し訳ありません。私は念話が使えないのです」


 「ほう、騎士は伝令に念話を使えない者を使うほど人材不足だったのか、それは知らなかったな」


 「―――く」


 伝令の騎士は、ヌゼを睨みつけたあと覚悟を決めた様に大きく口を開いた。

 そこにヌゼが腰に差していた剣のガード(鍔)を持ってボンメル(柄頭)を騎士の口にねじ込んだ。

 何故ゴーレムに乗るのに腰に剣を携えたままだったのか気になる。


 「奥歯に毒でも仕込んでいたか?古典的だな。自害などさせんよ。ただ判断の速さと潔の良さだけは褒めてやる」


 ヌゼは騎士の足を払い、仰向けにコカせると、剣のガードを踏みつける。アレは痛い。口から血が出てしまってる。というかその衝撃で毒が漏れたりしてない?大丈夫?

 直ぐにヌゼの使用人が駆けつけてロープで騎士を縛り上げた、口には猿ぐつわ代わりにロープをきつく噛ませている。

 何故使用人が都合よくロープを持っているのかも気になる。


 「アーバン殿、申し訳ありませんが急用が出来てしまったようです。本日の模擬戦はここまでとさせてください」 


 ヌゼは伝令に来た騎士を連れてさっさと帰ってしまった。


 うーん、何がなにやら。


 ちなみに、騎士が乗っていた馬は置き去りである。

 え?この子俺が連れて帰るの?何処に?家で預かれば良い?



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 色々迷走しております。

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