「…はぁ、まあいいよ。おめっとさん、二人とも」
「…ねぇ、響谷」
「どうした?」
「ふと思ったんだけどさ、海行ってないなって」
「…そうだな」
「でも今からは時期的に難しいでしょ?」
「…だな」
「それでさ、私思ったの」
「…何を?」
「海といえば?」
「…夏?」
「違う違う、そうじゃなくて。海に行くときに着ていくものは?」
「…水着?」
「正解!…それで、私としては私の水着姿を響谷に見て欲しい訳であって、そこが別に海かどうかはどうでも良いんだよね」
…どうでもよくなくね?
「…すまんけど、今俺はすっごく眠い」
「うん、分かってる。リアクションがなんか眠そうだから。…寝る?」
「…ちょっとだけ」
「分かった、それじゃ、おやすみ。30分くらいしたら起こすね」
「…おぅ、おやすみ…」
■
「…びや、響谷、起きて」
体が揺すられる感覚と、菜音の声で、俺の意識は現実に引き戻される。
「…何、してんの?」
何故か水着を着た菜音が俺を膝枕していた。
「え?何…って、膝枕?」
「…おう、そうだな。俺が聞きたかったのはそっちじゃなくて菜音の服装の事なんだけど」
「これ?水着だよ?」
「うん。それは見たらわかるんだ。
「…それは、ほら。海は時期的に難しいし、でもそれだったら響谷に水着をお披露目するのは来年になっちゃうわけで…。…だから、響谷に見てほしいなって。どう?似合ってる?」
「…まぁ、目のやり場に困るくらいには」
「そっか…嬉しい」
菜音が満面の笑みを浮かべて俺にそう言う。
俺が膝枕から起き上がると、菜音は少し残念そうな顔をする。
「むぅ…もうちょっとだけ膝枕されてほしかったなぁ~…」
「…悪い」
「でも、まぁいっかな。響谷に私の水着姿を拝んでもらおーっと」
そう言うと、菜音はソファから立ち上がって俺の目の前でくるりと一回転をする。
「さっきも聞いたけどさ、かわいい?」
「あぁ、すっごく」
「えへへ~」
菜音とそんな会話をしていると、リビングの扉が開いて葵が入ってくる。
「ただい―――…ま」
「あ、おかえり葵」
「おかえりなさい」
「あぁ…おぅ、ただいま…。…一応聞いておくけどさ、何してんの?」
「私の水着鑑賞会?」
「…らしい」
「…おう…」
■
午後11時頃、ベッドの上に寝転がっていると、部屋の扉が開いて菜音が入ってくる。
「…響谷…起きてる?」
「おう」
昼に来ていた水着の上に、前のボタンを留めていないYシャツを着た菜音が、俺の上に跨る。
「…血…吸っても、いい?」
「あぁ、いいよ」
「…なんか、さ。こういう格好で血を吸うの…興奮、するかも」
「そうなの?」
「うん。…じゃあ、いただきます」
菜音の歯が俺の皮膚を突き破って、血を吸っていく。
菜音の手が俺の手を握って、指同士を絡ませる。
「…ぷはぁっ…んっ…」
首元から口を離した菜音が、そのまま俺とキスをする。
「…えへへ…どう?」
「…血の味」
「美味しい?」
「…全く」
「そっか…。ごめんね…もう、抑えられないや…」
■
「…こんな、勢いに任せたみたいで…ごめんね?」
「…まぁ、いいんじゃないの?」
「…そう、かな」
「良いんだよ、もうやっちゃったんだしさ」
「…そうだね」
また、どちらともなく顔を近付ける。こんどは触れるだけのキスをした。
「んっ…。…ちょっと物足りないかも」
「そうか?」
「…もう一回」
「ん―――」
■
翌朝。
「…おはよ、響谷」
「おう、おはよ」
「…おはよう、お二人さん。昨晩はお楽しみだったようで」
「…あぁ、うん」
「否定しないんだな」
「事実を否定しろと言われてもなぁ」
「…まぁ、誤魔化しても良かったけど…ね」
「…はぁ、まあいいよ。おめっとさん、二人とも」
「…あ、何が?」
「なんだろ…ね」
菜音は葵の言葉の意味を察したらしいが、俺には教えてくれなかった。
…なんだよ、気になるじゃん。
「…えへへ」
そう笑みを零しながら、菜音は優しく自分のお腹をさする。
「…響谷、お前まさかとは思うが…」
「大丈夫、それだけはやってないから安心しろ」
「…まぁ、お前に限ってそれは無いか」
…なんてことがありながら、俺たちの日常は今日も幕を上げた。
――――――――
作者's つぶやき:えー…まぁ、はい。何をしたのかはご想像にお任せします。私がこういう事を言うってことは、まぁそういう事ですよね。一線超えちゃいましたよね。
…いや、まぁ、響谷くんの血を吸ったら欲求が増大するとかいう謎の性質の所為でもあるんですけども。
…まぁ、はい。
それと、これにて『幼馴染が急に血を飲みたいと言ってきた』完結です。ありがとうございました。
次は…そうですね、姫ほほの続きでも書きましょうか。あとGSMワールドですね。
↓【GSMワールド】~男の娘が初期装備で行くVRMMO~
https://kakuyomu.jp/works/16818093082248115838
↓クラスの姫(通称)は俺にだけ微笑む
https://kakuyomu.jp/works/16818093080564595108
――――――――
よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます