「…付き合っちゃう?」

「はい、ココア」

「ん、ありがと」

 リビングのソファに座る菜音にミルクココアを渡す。


「…ねえ響谷」

「ん?どうしたの菜音?」

「そのさ。…付き合っちゃう?」

「…はぇ?」

 またしても唐突に菜音の口から飛び出した言葉。

「………まぁ…良いけどさ」

「ん?」

「…菜音の理想の俺じゃないってことは先に言っておく…あと…いつでも嫌いになれる覚悟はしておいてくれ」

「…なんか、重くない?」

「…仕方ないだろ…俺は…彼女からフラれて数日ちょっとで立ち直れるような人間じゃないんだ」

「…まあ、それもそうだよね。…でも、嬉しい」

 …菜音には、嫌われたくない。そう思うのは、菜音の事を知らず知らず好いていたからなのか、それとも…、もう傷付きたくないからか。

 誰も俺の事を嫌わないなんて証拠はないんだ。葵だって、俺の母さんや父さんだって、何か一つの行動だけで俺を嫌ってしまうかもしれないんだ。

 …気楽に、なんて無理だ。だって俺はもう、一度味わってるんだ。大切な人が、浮気して離れていったことを。

「…そんなに…長埜さんの事、好きだったんだね」

「…あぁ」

 大切なものを、失って始めて気付いた。俺は結構、彼女の事が好きだったんだ、大切だったんだ。

「…まぁ、彼女にフラれるのも人生経験の内だよ。私だってさ、響谷に彼女ができて一回失恋してるんだから」

「…そう、だけどさ。そんな楽観的にはなれないって」


「おい響谷、折角私が帰ってきたのにおかえりの一言も…、…菜音ちゃん、響谷どうしたの?」

「…えっと…ちょっと…」

「…あぁ、彼女にフラれた云々の話振ったの?」

「はい…」

「…まぁ、なんて言うかさ、あんまり人の傷口には触れてやるなよ?響谷のはそれこそ、まだまだ新しい傷だから余計に痛むんだ」

「…そう、ですね…すみません」

「謝るのは私じゃねぇぞ~。響谷~、お~い、響谷~?」

「…なんだよ」

「いや、大丈夫かな~って」

「…な訳あるか…」

「だろうな。ざまぁ…なんて、普段なら言ってたんだろーが、今回ばかりはそうもいかないからな」

 …お前、言ってたろ。覚えてんぞ。

「まあ、軽口叩けるくらいの元気はあって良かった」



「…はぁ」

「お、もう大丈夫なんか?」

「…まぁ、ある程度はな」

「そうか、ならよかった。付き合い始めた瞬間にこうなったって、菜音ちゃんめっちゃ心配してんぞ?」

「…あぁ、悪い、菜音」

「…ううん、私も悪いから…」


「…まあさ、我慢しろなんて言うつもりはないが。新しい彼女なんだ。楽しませてやれよ」

「…わーってるっての」

「えっと…じゃあ改めて、よろしくね、響谷」

「あぁ、うん。よろしく。菜音」


――――――――

作者's つぶやき:短い。非常に短い。何と言う事でしょう。私の普段の…フルサイズ、って言ったらいいんですかね?…が2000~2100文字前後。今回はその約半分の1000文字。なんてこった、短すぎる。

あれ、私ってラブコメの方が得意だった気がするんだけどなぁ…。ネタのストックも語彙力も下の下であることが良く分かった瞬間です…。

GSMワールド書き過ぎて鈍りましたかね?

リハビリも兼ねてどうにかフルサイズのラブコメ書けるように頑張ります…。

――――――――

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