決戦兵器〈人間砲弾〉
時は少し遡り、ウルル古代遺跡。
一千年前まで栄えていたという古代文明の遺産が眠っていた、コケやツタの群生地だ。いまはバスティノに叩き起こされて良いように使われているらしいが。
「フッ!」
「ニャアアアア!? コイツ、ニャんニャのニャア!?」
まあそんなことカルタには関係ない。合金性の鎧も全て貫いて叩きのめしていた。
「意味わかんニャいニャ! 血ニャぞ、
「その
「黙れぇっ!!」
ネコ獣人が飛びかかるが、即座にカウンターの裏拳で弾き返した。
転がされすぎて、もはや毛並みはボロボロの雑巾のようだ。
「こ、こんニャの、ありえニャい……!」
「あり得るよ。ラムイ、ガブリール、ガオーガ、そしてルフェ。それらを殺したのが、僕だから」
「ッ、近寄るニャ!!」
「そう言われちゃ近寄るでしょ」
全身の毛が逆立つほどの恐怖を感じたバスティノが魔術弾を放つ。
この攻撃は魔女王のものと同じだ。そのため避けずとも無力化できる……のだが。
「煙幕……?」
着弾した瞬間、ボムンとスモッグが巻き上がった。
それが晴れると、既にネコ獣人の姿は無く。
「ッ!!?」
同時に、地面がシェイクされたかのように激しく揺れた。
「いや、地面じゃない。この山脈自体が、起きている!?」
『ニャ・ハ・ハ・ハーーッ!! ニャアの
「な、何だとぉー!?」
カルタはわざとらしく返す。対するバスティノは、遺跡最奥部を改造したコクピットから高笑いを浮かべていた。
『せいぜい逃げられるものニャら逃げてみるのニャ。まあオミャーはこの「ウルル・ユルングル」の前に、手も足も出ニャいだろうがニャあ!!』
山脈全体が、起立する。当然、カルタも全速力で避難する。
そしてルドウィーン側の方向、エルビス山脈に入ったとき、それの全体像を確認できた。
四足歩行の岩蛇を模した、超巨大な人造モンスター……否、決戦兵器といったほうがよいだろう。
『ニャ・ハ・ハ・ハーーッ!!』
無茶苦茶だった。大自然を改造して兵器に仕立て上げたのだから。
そして完全起動を悦ぶように、ウルル・ユルングルが地鳴りのような咆哮を上げた。
「っ……!」
これだけで地表が捲れた。カルタも、周囲の木々やモンスター達と共に吹き飛んでゆく。
いったい、こんなものが本格的に暴れたらどうなってしまうのか。
(ドォオオオオンッッ!!)
『ニャ……?』
答えは、山脈兵器の盛大な自爆だった。
『わっしょーーぃ!!
『バスティノの消滅を確認した。血管のように張り巡らされた洞窟に爆弾を仕掛け、起動時の魔力が一番通ったときに反応して大爆発させるとは』
『我ながら完璧なプランでしたぁ! このギミックは他のゲームにも使えますよぉ!!』
災害規模の爆風を背に、ウサギのアバターが宙を舞っている。
それをキャッチし、叫んだ。
「魔力充填完了……方向、これで合っていますか!?」
『微調整しろ! 既に
榊司令からデータが送られる。角度、パワー、そして〈ラビットジャンプ〉で跳ぶタイミング。
二、一、ゼロ。両脚に力を込め、自らを砲弾とし……。
「〈メガトン拳骨〉!!」
「ぐぅううっ!?」
そして現在、領空からの不法入国、公主の屋敷へ爆破侵入。からの、人類史上最強の拳骨をお見舞いしたのだ。
当然、公主邸も周辺の家屋も木っ端微塵である。
だが、クレーターの中心。ベルは未だ健在だった。
「ッ、頭イカれてんのか異世界人!!」
「お前にそれを言う資格は無い!!」
そのままマウントの取り合いにもつれ込む。殴り、体勢が変わり、また殴る。
サンサリアより遥かに進んでいるであろう文明同士の、原始的かつ異次元な殴り合い。
互いの拳が当たるたび、空気が破裂したかのような衝撃波が起きていた。
そして互いの顔面が打ち抜かれると同時、距離を離して向き直る。
「大嘘じゃん。タイマン張ったら
「どうやって
「こっちの台詞だよ。レネ、チャート変更だ」
『オリチャーですねぇ、了解しましたぁ!!』
二度も負けている相手だ、リベンジマッチに闘志が燃える。
もう不意打ちもできないだろう。正面から叩き潰すべく、瞳の奥に魂をギラつかせ、強敵を前にしたときのみ見せる笑みを浮かべ。
「
「お前も編集してやる。異世界人」
忍ばせた
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