第3話 リフェブレガチ勢vsウィキゲーマー
一瞬の沈黙が特殊任務室に走った。
ここに居る生徒は、カルタを含めて十名。つまり九名に対して喧嘩を売ったことになる。
やがてそれは負の方向へと流れてゆき、常識知らずへの当惑に変わってゆく。
「何を言うかと思えば。誰に外れろって?」
「リフェブレをクリアしたらしい、君たちに言っているんだよ」
「ふざけているのか、任務前だろ!!」
自分より知名度も成績も劣った存在に、シュウが怒号を飛ばす。
だがカルタは意に介さず、淡々と根拠を述べ始めた。
「リフェブレは、無限の選択肢に、無限のルートがある。辿り着く
「だからどうした。攻略
「そういうところだよ」
カルタが続ける。
「そして、発売から十八年経っても発掘されきっていない初見殺しと、複雑で多彩すぎる独特なシステム。これらを一回クリアしただけで分かった気になれるんなら……この任務で全員死ぬよ」
その言葉は重厚だった。メジャーとは言い難いゲームを、何年経っても極めるべくプレイし続けている猛者の意見だ、無碍にできるはずもない。
しかし、アドバイスを理解するには、優等生たちのプライドは幼すぎた。
「調子に乗るなよ。ここに集められた全員が、成績も実績もお前より上なんだ」
「調子に乗っているのはそっちだろ、ウィキゲーマー」
「黙れ劣等生。メジャータイトルになれないようなオワコンゲーをプレイし続ける異常者が」
「……」
カルタは握り拳と喉の奥を必死に力ませていた。もはや言葉を交わすことすら無駄に思えたからだ。
シュウは言い負かしたと思い込んで愉悦の笑みを浮かべている。周りの生徒も異端を冷笑している。
最悪の空気だ。責任者の大人も、異常者をを排除して調和を取ろうと企んでいるほどに。
「お前。ここから出てけ」
「あーはいはい! もういいでしょ
「あ?」
「え、誰?」
「どうもぉ! プランナー科期待の超新星、レネ・
(自分で超新星って言うんだ)
陰湿な空気を切り裂いたのは、カラッとした明るい少女だ。
桜色のボブを纏めているのは、ホワイトのウサ耳付きヘッドホン。
身長がコンプレックスのカルタよりも一回り小さく、制服は将来を見越してかダボダボだ。
そんな後輩に調子を崩された腹いせからだろうか。
「ちょうどいい。宇佐美、お前はカルタ・碇谷と組め」
「はいもちろん!」
「どういうこと?」
「今回の任務は、
「いやぁ、チュートリアルで詰むRPGとかヤバすぎません?」
(だから巷でクソゲー呼ばわりされることもあるんだよね……)
初見プレイヤーへの同情と共に、不安も抱いていた。
プランナー科は偏差値も倍率も非常に高い。プロゲーマーより高い能力が求められる、非常に狭き門のはずだ。
『プランナーは、密偵であり、作戦参謀であり、そして現場指揮官でもある。頭脳、体力、統率力のみならず、何かしらの特殊技能を持っていないとまず受からない』
そもそも案件とメンバーに合わせて、任務開始前から綿密すぎるスケジューリングと作戦立案をしなければならない。
失敗すれば仲間の死、人生の破滅、そして最悪の場合は自分たちの世界の滅亡。
(いや特別任務に参加できている時点で、エリート中のエリートなはず……)
だがお世辞にも、レネにそんな能力があるとは思えなかった。
「嫌なら作戦から外れてもらうだけだが?」
「はぁ。やればいいんだろ」
「わぁい、こんなデータキャラより楽しそうなんで最高です!!」
「先輩に向かってコイツ……!」
「あ、現場判断はカルタ先輩に一任するんでお願いしまーす」
「ええ……」
いつの間にか立場が逆転していたが、受け入れなければそもそも任務に入れない。
「分かったよ」
「サボりだぁ、やったぁー!」
「ただし情報収集やナノドローンの配備、あと緊急時以外の状況判断はそっちがしてね」
「サボれないじゃないですかぁ、やだぁー!!」
「随分な余裕だな。ならばひとつ、誰が先にさんサリアを滅ぼせるか勝負でもするか?」
「いや面倒くさい」
「おま、逃げるのか……あれだけの大口を叩いておいて!!」
「全員無事ならそっちの勝ちでいいよ。あと、宇佐美さん」
「レネで良いですよ〜」
「じゃあレネ。僕に判断を一任するなら、コレだけは必ず守ってほしい」
「おっ、直接脳内に
「出来るわけないでしょ。ほら、指示出しとくからこれ通りやってね」
「脳からメッセージを出力してるから同じで……え、これマジすか?」
指示に驚愕している後輩を尻目に、送られた作戦内容を脳へと流し込む。
そして準備が完了すると同時に、各々がゲーミングカプセルへと入り込み。
「それでは、現時刻を以て『サンサリア破壊作戦』を開始する」
「「
「
形骸化した総司令の音頭と共に、
〜〜〜〜〜〜
そしてサンサリアに到着して早々、カルタは自ら命を絶った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます