第6話 イケメンとモブ
城崎と俺は同期だ。
東京出身でオシャレな私大を卒業した城崎。
地方の高専を出て、コンピューターの専門学校を経てこの会社に入った俺。
東京のゲーム会社に勤められたというだけで舞い上がっていた俺に、城崎は「俺、就活時に遊び過ぎちゃってさ……」とはにかむような笑顔を見せた。
その笑顔に目がハートになっていた先輩の女子社員を見て、俺は地域だけではない様々な格差を理解した。
イケメンで背が高くて、要領のいい城崎。
それでも城崎はいいヤツだった。東京をよく知らない俺をあちこち連れて行ってくれて、数合わせであったとしても合コンにも呼んでくれた。
俺に(一時的にではあったが)彼女が出来たのはこの合コンのおかげだ。
合コンの前に「田舎っぽいファッションをどうにかしたい」と遠回しに言ったときにも、すぐ察してくれた。
バカにすることもなく、一緒に(ユニクロに)洋服を買いに行ってくれたり、オシャレ過ぎないヘア サロンを教えてくれたりした。
おまけに「もう着ないヤツで悪いんだけど」と言いながら、小洒落た(ビームスの)お古をくれたりした。
俺が東京で気後れせずに街を歩けるようになったのは城崎に負うところが多い。
彼女と別れたときも、週末に何かと声を掛けてきてくれた。大したことをするわけでもない。いつもどおりのなんてことのない話をするだけだった。しかし、ぽっかり空いた週末の時間を一人で過ごさなくて済むのには本当に救われた。
俺は、さりげない城崎の心遣いに大いに感謝した。
それでも年が経つうちに俺たちの立場はだいぶ変わった。
城崎はそのルックスと要領の良さを生かして、アーロン ゲームズとの折衝役になり、値段や納期の交渉をするようになった。
それが上手く行って、そのままプロジェクト マネージャーに出世した。
俺はといえば、がりがりとコーディングするだけが能だった。万年フロントエンド プログラマーだ。
そのせいで、面倒くさそうなコンポーネントはことごとく俺に回ってきた。それに加えて、アルバイトのコーディングをチェックするのも俺の仕事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます