第21話 一騎打ち

青年は大剣を振り回す。


青年は若いわりに才能を生かす技術と経験があり、


大剣を振り回しているにもかかわらず、動きが素早い。


対する少年は基本的には避けながら、カウンターを狙う。


しかし、リーチが大きいため、全てが避けられるはずもなく、


カウンターを挟みながらだと、5回に1回くらいは受けなければならなかった。


前世と転生してからの時間で培った技術や経験面では勝っていても、


それを上回る体格さと力の差で押し負けてしまい、攻撃を受けた後には飛ばされ、


ホンの僅かではあるが、隙が生まれる。そこを容赦なく、突いてくる。




「…っっ。」


6回目の打ち合いだった。


少年が勢いよく振るわれる大剣を受け、


初めて飛ばされるのは。


宙に浮くものの、高さが低かった。


そのため、少年はすぐに態勢を立ち直らせる。


そして、ギリギリながらもすぐに振るわれる


次の大剣の攻撃を避ける。




はじめは、得意のスピードと経験を生かしたカウンターで優勢だったが、


相手も少年のスピードに慣れて来て、


徐々に適応している。


少年は素直に心の中で、


素直に成長速度が速いなと感心する。




「くっ」


十数回目の打ち合いで少年が大きく後ろに飛ばされる。


少年は宙に浮く。


もちろん、態勢をすぐさま立ち直そうとするが、


間に合わない。




少年の首に向かって大剣を振る。


青年は取ったと思った。




しかし、少年は空中で無理やり、身を翻す。


大剣は少年の首があったところを過ぎ、空振りする。


その隙を少年が見逃すはずもない。


少年は足に力を込め、地面にスタッと着地する。


そして、着地した瞬間にそのまま力強く床を蹴る。


今度は扇子が青年の首に一瞬で近づく。






なぜか、青年にはその少年の動きがスローモーションに感じられた。


とはいえ、今から、避けられるはずもないと思うが…。


ああ、ここまでか。


私は負けるのか。


これから、どうなるのだろうか。


死ぬのだろうか。


それとも、屈辱にまみれた人生になるのだろうか。


いや、それはないか。あの少年ならそんなことはしないはずだ。


そんな気がする。


いや、それさえも私の希望的観測か。


あの生活に戻るのだろうか。


あの生活は苦しかったな。





青年が思い出すのは昔の記憶。


甘くて苦い


そんな大切な思い出だった。

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