第19話 嵐の前

時間は少し巻き戻る。


気配のない少年は薄暗い廊下を迷いなく、疾風の如き速さで駆けていく。



少年と竜の少女が二手に分かれたその時から、


少年は地下2階から、地下4階まで順に下りて行って、


兵たちを各個撃破して行ったが、


地下2階から、地下4階までには


1階層ごとに配置されていた見張りの兵2人ずつと、


たまたま尋問のために来ていた兵が数人の計10人と少なかったため、


やけにあっさりと終わってしまった。




しかし、少年はつぶやく。


「予定よりかは早めに進んでいるが、この程度であれば、5分で終わらせられたな。


 実際には、2分も追加でかかってしまった。」



少年はそんなことを言うが、


ここに竜の少女がいたら、絶対に「うがががががが」となってしまうだろう。


なぜなら、この軍の本拠地はとても広く、


その面積は1階層だけでも、5万平方メートルなのだから。


どこぞのドーム1個分だ。


そんな地下2階から、地下4階までを走るのだ。


竜の少女でも、2時間はかかってしまうだろう。




そして、少年は地下1階へ続く階段を上る。


そのとき、少年は竜の少女の動向を見ていた。


竜の少女がおじいさんと対峙していた。


「あははは。やっぱ苦労してるね。


 あー。敵を寝返らせようとしているのか。」


少年は、一瞬と言う長い時間で思考する。


竜の少女は、あのおじいさんを倒すのは少し難しく、


外に出る出口の場所がわからない。


そして、あのおじいさんは竜の少女とは全く別のタイプで、


基礎運動能力がとても高い。


「これは、結果が楽しみだね。」



そして、虹の瞳イビルアイを使って地下1階を見ながら、


走るが、兵たちは階層ごとに配置される2人以外誰もいなかったため、


さっと、その2人を処分して駆け抜ける。


それから、地下から、地上につながる階段が見えてきた。


そこで、地上の全員を皆殺しにするわけにもいかないため、


とってきたローブを被り、黒のフードで顔を隠す。




少年は、その階段を上る。


そして、目の前に広がる光景を見て、つぶやく。


「うわあ。ここまでするか?」


「これは、想像しなかったわけではないが、少し厳しいな。」


目の前に広がるのは、ざっと数えて100人くらいだが、


少年の周りをぐるっと囲む。


それに加えて、ここには魔法使いと見られる兵たちもいて、


少々厄介だ。


そして何より、もちろんここの部屋は他の部屋とも繋がっているため、


ここの部屋だけでなく、他の部屋に兵たちまで相手にしなければならないという


危機的状況。


少年は自分の周りを見渡しながら、


まさに、こんな状況を四面楚歌と言うのだろうか


と思う。




そして、ニコッと笑い、口を開く。






「さて、掃除を始めようか。」

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